『ザ・バッド』を観ました

ピート・ヒューイット監督の『ザ・バッド』を観ました〜。

ザ・バッド [DVD]
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原題は"THE MAIDEN HEIST"、邦題にはやる気が感じられません。熟年3人のクライム・ストーリーという売り方ですが、実際はベテランの味を存分に楽しめる、美術品泥棒のコメディです。いい時間を過ごせました。3人の美術館の警備員。長年の勤務で、それぞれお気に入りの美術品があるんですが、美術館の改装によってそれらの絵が移されてしまう、なんとかしなければ、そうだ盗もう…というお話です。

クリストファー・ウォーケンモーガン・フリーマンウィリアム・H・メイシーという、役者陣のクオリティは絶品なのは言うまでもないですが、「泥棒モノ」として見ても、『ペントハウス』よりも楽しかったし、ワクワクしたのが不思議です。泥棒モノの見所って、泥棒の手口の精緻さよりも、泥棒する人たちの動機にあるんじゃないかという気がしてくるほどに、彼らの美術品への偏愛が実に上手に演技に表れていたなーと思います。

特にウィリアム・H・メイシーが美味しーです。まあこの3人を並べたら当然そういう役割だわなあと思ったんですが、変態風味の強い役は最高でした。お気に入りの銅像を見ると、どうしても服を脱ぎたくなっちゃうって性質なんでしょうね。

泥棒の実行のための阻害要件になるのが、主人公クリストファー・ウォーケンの奥さん役、マーシャ・ゲイ・ハーデンです。美容院で働いてマイアミ行きの金をチマチマ貯める派手目なオバちゃんというテイでしたが、彼女のコメディセンスも抜群ですねえ。『ローラーガールズ・ダイアリー』でのお母さん役も、割と子供にだけは厳しい、阻害要件の人物として現れていました。どちらかというと敵となる厳しいお母さん役がお似合いのようです。味方となる優しいお母さん役のイメージのあるパトリシア・クラークソンとともに、私の中の「3大お母さん」のひとりです(もうひとりは検討中)。

お話自体、何かとツジツマの合わない部分もありますが、それなりに面白かったですよ。周到に計画して持ち出した木箱を間違えちゃった〜やばいどうする?どうなる?…あたりまでは伏線もあるし想像しやすいんですが、その後の展開、特にマイアミの浜辺でのオチの感触は、こういうキャスティングだからこそ。終わりよければすべてよし、ですね。幸せな気分で満たされるオチでした。