『シンディにおまかせ』を観ました

マイク・ジャッジ監督の『シンディにおまかせ』を観ました〜。

シンディにおまかせ [DVD]
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失礼ながら、ホントにどうしようもない演技のミラ・クニスを使って、どうやったら面白い映画が撮れるか、その最高の例がこの映画です。邦題こそミラ・クニスがいっぱい出ているように見せていますが、実際は四方八方にゴロゴロ名プレイヤーが揃ってて、どのシーンも楽しめる良作でした。登場シーンの少ないミラ・クニスにとっても、なかなかメリットのある映画だったと思いますよ。

まず主演はジェイソン・ベイトマン、香料会社の社長役です。いつも堅物で親切な紳士のイメージの彼が、マリファナ吸ってぶん殴られて青タン作るサマを演じているのがとても笑えます。夜の性生活が悩みなんだけども、全然スケベに見えないのはどうしたものかと思いました。

その香料会社の幹部役がJ・K・シモンズ。社長との会話シーンは、完全に信頼の置ける役者同士のシーンです。どんなクソ脚本でも成立させる腕のある二人だから、のちの買収や賠償の話も説得力が出てました。

行きつけのバーの店主がベン・アフレック。髭モジャの夜の商売の人って風体で、なにかとドラッグを薦める役柄です。ジェイソン・ベイトマンが夜の夫婦生活の悩みを話すと、成り行きでドラッグを薦めて、さらに奥さんを浮気させるためのジゴロを紹介します。手数料よこせというクダリはいかにも彼らしいラインでした。

そのジゴロ役が、ダスティン・ミリガン。イケメンでもめちゃめちゃ頭の悪いアホな役で、理解力に乏しいサマの演技はクソ笑いました。両袖切ったパーカーという衣装がホントにハマってて最高ですねこれ。

そしてジゴロが、プール掃除と称して社長宅に行き奥さんを誘惑するわけですが、奥さん役は出ました、クリステン・ウィグです。『ブライズメイズ』でも感じましたが美人ですねえ。でもまあ、さすがにミラ・クニスと比べたら並の美人ですけどね。彼女で笑えるシーンと言えば、終盤の隣人と言い合うシーンです。

その隣人ってのが、デヴィッド・ケックナーなんですよコレがねえ、驚いた。この映画、ホントに惜しみなくコメディアンを投入してきます。ジェイソン・ベイトマンが自宅に帰りつく度に、なんやかやとくだらない話を持ちかけてきて、いろいろと悩みの絶えない社長をさらにイライラさせる、という構図です。くだらない役柄でした。

工場の従業員に目を向けると、偶発的な事故で片方の金玉を潰してしまう役がクリフトン・コリンズ・Jrです。当たり前ですけど、『カポーティ』で殺人犯を演じていたのとは全然違いますねえ。

ベス・グラントの工場の勤続14年のおばちゃん役も、ロックバンドを5つも掛け持ちしているバイト青年役のT・J・ミラーも、よく分かりませんが工場の従業員だなあって雰囲気が出てて、大事な役だなあと思いましたよ。

まだまだ名プレイヤーが出てきます。ジェイソン・ベイトマン大麻を吸うシーンでの重要な役はマット・シュルツ。強烈なコワモテのキャラクターで印象に残ります。このシーンの音楽使いがとても楽しくてアホらしくて、ジェイソン・ベイトマンが困り果てるサマが最高です。

そしてスペシャルゲスト、ジーン・シモンズ。あんたが弁護士役かよ! この弁護士は、これまでの映画で観た弁護士の中では最強のキャラと言っても間違いありません。出番は会社での賠償金の交渉シーンのみでしたが、それでは貴方はドアに金玉挟みますか、のクダリ、相当な名シーンです。ジーン・シモンズが熱弁しているのを、ジェイソン・ベイトマンJ・K・シモンズが聞いているという絵のすごさと言ったら…プロレスに例えるならロイヤルランブル見ているような気持ちになりました。

…というわけで、ミラ・クニスどころではないということがお分かりいただけましたでしょうか。ミラ・クニスがもし仮に、本当にしょっぱい演技だとしても、これだけの名プレイヤーに囲まれたなら、必ず成立するんですね。映画はこうなってくると実に面白いもんですね。思えば『ステイ・フレンズ』も相当に脇役勢を固めた映画でしたが、ここまで揃うとミラ・クニスも面白い役者に見えてきます。

現実としては、ミラ・クニス推しの邦題も致し方ないかと思われます。それが一番イージーで分かり易いプロモーションなのは明らかだし。