『楢山節考』を読みました

深沢七郎さんの『楢山節考』を読みました〜。

楢山節考 (新潮文庫)
楢山節考 (新潮文庫)
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深沢 七郎
新潮社
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早速ですけど、さて読了、ちょっと検索してデータを整理して、感想をヌルヌル書こうかと思った矢先に、ものごっつい評論にぶち当たってしまいました。

松本邦夫遺稿集 ー作家その原風景ー

松本邦夫さんは元高校教師で、2005年にお亡くなりになってます。なんという『楢山節考』論考。得しました。これを読んだもんで、書く事がなくなってしまいました(´・ω・`;) でもちょっとだけ書きますすみません。

楢山節考』は正宗白鳥さんが高く評価し、第1回中央公論新人賞を受賞し、ベストセラーとなり、映画化&ドラマ化という具合に大きくハネました。これは、図らずもテーマが大衆的でウケたということを意味します。深沢さんの作品をアンチヒューマニズムなどと呼ぶのはいいんですが、大衆の目からしたら「ヒューマニスト」の木下順二さんと大きくは変わらないんじゃないでしょうか。もちろん深沢さん個人は、スキャンダラスな別の作品で右翼から狙われただの、週刊誌ネタになるような人ですが、『楢山節考』は「止めてくれるなおっかさん」の大衆演劇や、落語の「子別れ」「薮入り」などと同じく、特に「親子の情」にピントが絞られたんでしょう。

さて、で、そういう読み取りが凡人であって、正宗白鳥さんはすでに深沢さんを見抜いていたんだよ、とのことです。この文庫には全部で四編の短編が入ってますが、他の作品については、たとえば私小説風の『月のアペニン山』は徹底的に人間に無関心で薄情な感じがするし、『東京のプリンスたち』は取るに足らない連中の浅はかな考えと会話を綴ってガロ系のマンガみたいに捨て鉢だし、まあどちらからも確かに捻くれた人なんだなってのは臭ってきます。

しかし『白鳥の死』は非常に良かったです。正宗白鳥さんの葬式に行く途中、道草しているところで書いたというテイの「追悼文」です。人の死を悼むことの意味は多分どんだけ大人になっても謎で、ムラ社会であれば「昔からやってるから」という理由で葬儀をやるもんでしょうけれども、本当に思いやることってなんだろう、と考えさせられました。悼む気持ちをどうやって表現するかは人それぞれです。赤塚不二夫さんの葬儀でのタモリの弔辞とは、また違ったジャズを感じました。ジャズじゃねえや、ロックですね。この人かっこいいんですよねえ基本的に。モテたんでしょうね。