『雲奔る—小説・雲井竜雄』を読みました

藤沢周平さんの『雲奔る—小説・雲井竜雄』を読みました〜。

雲奔る―小説・雲井竜雄 (文春文庫 (192‐4))
藤沢 周平
文藝春秋
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今回の悼ましい東北地震で、「将来日本は素晴らしい復興をしたのだ、と世界に誇れるような復興をしていかなければならない」と、ある解説者がコメントしてました。復旧ではなくて復興なんだ、まさに東北を復興するのだ、というメッセージを、政府は早めに出していかなければならない。そんな話に深くうなずきました。これから東北を興すのです。なんかそういう話だけでも聞けて得しました。

さて、この『雲奔る—小説・雲井竜雄』は、幕末の米沢藩の志士の伝記です。以前読んだ『よみなおし戊辰戦争』という新書で知った本なのですが、読むのにずいぶん時間がかかってしまいました。普段の藤沢周平作品と趣が違って、ちょっと司馬遼チックな堅物な歴史小説で、さらに個人的に幕末は「苦手」な時代なんですよね。この時代って結局、誰を主役にしても説明的な文章が多くなってしまうし、この作品の場合「討薩!」というイデオロギーがなかなか理解しがたいのです。その意味で尊皇でも攘夷でも、志士はみな酒飲んで口角泡を飛ばしていたんでしょうけれども、最終的には暗殺の連続で、大勢に飲み込まれざるを得ないクソ侍どもとも言えるんじゃあないかと思うのです。きっと私は、この時代のサムライ気取りが一番嫌いなのでしょうね。だもんで、本当はもう一度、もう二度は読まなければ分からないと思います。

にしても、これ読んでいる間にいろいろありました。電車の中で読んでたら、社会人男がどうやら今度結婚するらしく、自分は福島で相手は山口なんですよね、なんて話が聞こえてきました。あれれれ、これはもしかしてツッコミ待ちなんじゃないかなと思ったら、案の定先輩女が、福島と山口って大丈夫なの? と話に華を咲かせてきました。男の方は釣れたとばかりに、いえでも僕会津じゃないんですよねえと切り返し、それを見た先輩女がちょっと面白くなかったのか、福島って暗いよねえ野口英世とかも暗いしね、と一方的にしゃべくり、次の駅でじゃあねと降りていってしまったのでした。

あるいは主人公の雲井が京都、江戸、米沢と歩き回った徒歩の時代を、自分も帰宅困難者として素直に感じました。京都から江戸に着いたら鳥羽伏見の戦いが終わってたとか、まったくカワイソウですね。この時代にtwitterでもあったらどうなってたんでしょう。あるいは本当に、奥羽越列藩同盟が実現し、東北が近代国家として独立していたかもしれませんね、な〜んて。

冒頭の復興という言葉に、実はこの奥羽越列藩同盟を重ねてみたいです。これを書き上げたことで、東北人としての藤沢周平さんの期するものは、達成できたのでしょうね。結構それを思うと、本当に東北の復興に、私もなにか手を貸すだけじゃない何かをして加わっていきたいと思います。