『ファーストフード・ネイション』を観ました

ファーストフード・ネイション』を観ました〜。

これはシリアスな問題作なんですけど、このリチャード・リンクレイター監督はあの泣かせるジャック・ブラック主演『スクール・オブ・ロック』も撮っていることを知って驚きました。アンタなんちゅう人や!


この映画、平たく言えば、大量生産、大量消費の社会において、大企業はどうやって利潤を追求するのか、をドラマ仕立てで見せましたっていう内容です。大体皆さんよく知ってる当たり前の話、もし知らないとしても、実際そうだろうなと思い出させるような話です。珍しい話ではありません。なるほどね、とか、そうだよなあ、とか、いちいち納得しながら観る不思議な映画でした。

これが仮にトヨタの「カイゼン」に迫ったドキュメンタリーなら『ガイアの夜明け』みたいなヨイショ番組にでもなってるところです。しかし、こと食い物の話、自分たちの口に入る物の話になってくると、観た人全員が確実に雁屋哲状態になるんですよねえ。そういうのはよくないなあと第一印象で思いました。最後の方に屠殺のシーンが出てくるんですけど、もしこれを観て牛さんカワイソウなんて思ったとしたら、おめでとうございます貴方は今日からアニマルライツ系活動家です。私は「フ・ザ・ケ・ル・ナ」と怒りをこらえましたけれども。どんなスローフードでも動物は絞めるもんでしょ? こういうのって、まさにグリーンピースの手口ですよね〜、あんまりフェアではないなあと。食品加工はたいてい似たようなもんでしょう。どこそこの工場で働いてた人がもうなんちゃらは食べる気なくすよ、みたいな話って、よく聞きますからね〜。

要するに、業界や企業はただ利潤を追求した結果こうなったという話で、そのために100円でハンバーガー食べられるという恩恵を我々も受けているんです。ファーストフード業界は、ただ我々消費者のニーズに合わせただけのことです。他社との熾烈な競争の中で次々とキャンペーンを張っていく…普通だったらこれは止められないんです。資本主義の崖を石がものすごい勢いで転がり落ちているんですが、どうやって止めようか、まさにそれをやってる学生仲間たちが出てましたね。牧場の柵を壊して牛を自由にしようとして。まったく無力でしたけど。「どうせ無力なんだからやんなきゃいいのになw」と思ってしまったらそれは支配者/抑圧者の思うツボです。原発だってそうですよ。原発反対の声をあきらめちゃいかんのです!

…とかなんとか、多少は私も熱くなりましたけどね。正直言うとこの映画、ファーストフード業界への問題提起モノ、告発モノとして知られていますけれども、そうじゃない部分でも結構いろんな印象に残るシーンが多いので、色眼鏡で観るのはもったいないです。なんつってもカタリーナ・サンディノ・モレノとアナ・クラウディア・タランコンの二人の美人は目の薬。それから最初と最後に挟まれる国境地帯のシーン、それと運び屋役のルイス・ガスマン。このキャラクターはちっとも笑えないしちっとも怖くないんですが、そういうところがまさに小物役の専売特許という感じ。好きなバイプレイヤーです。彼を主演にした泣ける映画なんてあったら、おそらく賞総ざらいするものと信じています。あと母娘と叔父さんのシーンも地味ながらよかったな〜。