『トゥルー・グリット』を観ました

コーエン兄弟監督の『トゥルー・グリット』を観ました〜。

トゥルー・グリット スペシャル・エディション [DVD]
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ふう…名作。ですね。圧倒されました。

この映画はウェスタンの衣を被ってはいるけれど、真っ先にイメージしたのはポーカーです。ほとんど西部劇を観たことないんですが、殺す殺されるアウトローな世界というのは、実際は様々な細かい交渉が重なっていて、アメリカっつーのはそれが当たり前のカルチャーなんですなーと改めて思いました。

だから、綿相場の交換所で馬の買い戻しの交渉シーンや、保安官の裁判のシーンを最初に長い尺でたっぷり見せてくるのには、交渉の映画として意味があるわけで、ついでに女の子と保安官のキャラ説明としても大事で、じわじわーっと後から効いてくるんです。この交渉上手な女の子は弁護士や法廷を話に持ち出すんですが、綿相場屋の爺さんには通じても、老獪な保安官にはそれほど効かないっていう対比も面白かったです。

保安官もテキサスレンジャーも、最初は小娘なんぞ相手にしない、まあ当然です。それが徐々に女の子の強さたくましさを認めていって、最終的には人としての愛情だろ〜優しさだろ〜、で観客が救われた気分になる…この流れが普通の映画です。ところがこの映画は、ちょっと味が違うんですなあ。家族のように打ち解けて共闘するって話ではなくて、3人とも最後まで殺伐とした緊張関係が保たれているんです。男の友情だの、ましてや小娘への同情だのが入り込む余地のない世界が、そのまんま居留地の広大な荒野の風景として映像に現れております。保安官が小娘を夜通し馬を駆けて運ぶシーンなんて、下手に人間愛を伝えそうになりそうなのに、殺伐とした感じがキープされていて、絶妙だったと思います。上手。ホントに上手でした。

穴と蛇と雪の使い方がお見事過ぎて、これには息を飲んじゃいました。ワビサビというか官能小説的というか、どうも日本人の深層に刺さるメタファー使いで、やるなーと。そんなことを考えると、主演女優のヘイリー・スタインフェルドも、どこか昔の宮沢りえに似てる気がしてきます。んなわけないか。

あと、マット・デイモンはすげえ役者です。信じられない。どういうスケジュールでこれだけの大作に出演できてんのか、しかも全然違うキャラで。実はマット・デイモンは何人かいるんじゃないかって気もしてきます。んなわけないか。