『スウィート・スウィートバック』を観ました

メルヴィン・ヴァン・ピーブルズ主演・監督の『スウィート・スウィートバック』を観ました〜。


いきなりタイトルバックのボカシが衝撃的!ギャハハハ!でも大笑いできるのはここだけ。後は終わりまで一気に走ります。内容は、主人公スウィートバックが白人警官から逃げて逃げて逃げまくるっていう話です。

映像、音声の編集がフリーダム過ぎるので、一発目に見たときは戸惑いましたが、あまり考えずに何度でも観られる極上の「変な映画」です。結局予算じゃなくて、最後には監督の撮る意欲とか情熱しか問題にならないんだなあと、強く思った次第。

1970年代前半のアフリカンアメリカンにしてみれば、特に映画という分野では、コネも金もなかったと言わざるをえません。ハリウッド的な意味での映画の撮影技術もなかった。しかし、それでも映画は撮れるんです。まったく金もコネもないメルヴィンが、独学で素人俳優を使ってやりたい放題に撮影して編集して、こんなに変な映画になったぜっていう。

なによりもまず、これが上映された当時の事件性を感じました。すごい売れたらしいっすねえ〜。スパイク・リー監督の『Do the right thing』にも共通する感覚は、多分両作品ともインナーシティにおけるアフリカンアメリカンの貧困を描いているからでしょう。この感覚を湯浅学さんは、例のメキシコ・オリンピックでにょきっと勃起した二本の黒い拳をイメージして説明していました

アフリカンアメリカン芸術をどう感じるかは人それぞれでしょうけれども、私は個人的に、Hip HopやSoulなどの音楽やファッションになぞらえて見たくはないな、と思ってます。映画も音楽も、恐らくありとあらゆるステレオタイプが重層を成していると想像すれば、もっと解体して見なければならない類のものでしょう。その意味ではブラックスプロイテーションというカテゴリーを立てることも気が進みません。メルヴィン監督が、あらゆるステレオタイプから解放しようとした試みの痕跡は、確かにこの作品に認められます。

なーんてね、まあいいや。そんなことを突き詰めても楽しくないのでやめましょう。セックスセックス〜!