『よみなおし戊辰戦争』を読みました

星亮一さんの『よみなおし戊辰戦争―幕末の東西対立 (ちくま新書)』を読みました〜。

たとえて言うなら、新年に彼女の実家の福島県会津若松市に遊びに行って、そこで偶然会った親戚のおじさんが歴史マニアで、戊辰戦争について散々語り尽くされた…そんな、あんまり爽やかではない読後感があります。「あのおじさんは言いたいこと全部言ったのかな」「ずいぶん酔っぱらっていたようだけどどうなんだろう」「そういえば会津藩の話ばかりで、見たかったお笑い番組を全然見れなかったよね」…と、東京への帰りの車の中で振り返っている、そんな読後感です。

太田昌秀さんの『沖縄 戦争と平和』でも同様だったんですが、この手の歴史認識問題では、一方に肩入れしていると感傷的な記述が多くなりがちなんですね。「会津の人はいまだに薩摩長州に対して〜」なんてこと、さすがに通り一遍で古いだろ、という気はします。しかしネタとして残っているだけ十分じゃないかなと感じます。初めてこのネタを知る人が、また歴史を知るきっかけになるわけですから。つい最近のニュースにありましたけど、原爆が広島と長崎に落ちて2回被爆した不幸な男の話も、極論として言うなら、ネタとして歴史を知るきっかけになれば、それはそれでいいんじゃないかと思いますよ。

星亮一さんは会津藩にどっぷり肩入れしている歴史作家で、著作のほとんどが幕末期のものという、もう完全なスペシャリスト、確信犯です。幕末という時代を好む歴史オタクの数も多いんでしょう、恐らく星さんレベルの歴史作家になると、いろんな地方の講演やシンポに引っ張りだこなのではないでしょうか。現にこの本でも、戊辰戦争を考える様々なシンポジウムに足繁く通っていらっしゃいます。戊辰戦争については、各地の熱心な歴史ファン、歴史研究家が、それぞれの地方で取材研究して、地方の出版社から発行したような書籍にも、目が行き届いているのだろうと感じます。明白なスペシャリストなんです。

もっとも私はまったくの勉強不足ですから、秋田県の鹿角や斗南藩の話もそこそこ楽しめました。ですからタイトルのように「よみなおし」までいきません。「官軍」側の歴史すら実はおぼつかないわけで、これをひとつの勉強の契機にしようとは思いました。まずは大佛次郎さんの『天皇の世紀』はマスト、余裕があったら藤沢周平さんも読んでみたいです。

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一番最後の章で、戊辰戦争後、長州が奇兵隊を半分にした際に、百姓の次男三男からリストラして、彼らが文句を言うもんだから帰郷した木戸孝允が見せしめに処刑した、という話もさもありなん。現在の日本、戦時中の日本というブラック国家、ブラック政府ぶりが、やはり明治維新までさかのぼれるわけですね。日本の歴史を知ろうという時、特に地方史、農民史の視点は欠かせないものだと感じました。