新聞配達 テリー・ピッケンズ

スタッズ・ターケルの『仕事(ワーキング)!』を読んでます)

『誰がニュースをひろげたのか?』というこの節では、インディアナ州ニューバーグの3人の新聞配達少年が扱われています。12歳のビリー、おなじく12歳のクリス、そしてクリスの兄の14歳のテリー。ふたりの12歳の少年はまさに最近新聞配達を始めたばかりらしく、生き生きとインタビューに答えて「仕事は楽しい」「人間が好きになる」ということを話しています。それと対照的に14歳のテリーは、新聞配達としての悩みを打ち明けています。

貸しがあった人なんてさ、ぼくが夜の十時に集金きたって、本当にかんかんに怒っちゃってさ。どうしてこんな遅くに集金に来るんだって。そいつはさ、きっと家にいてさ、ぼくにつかまったんで、腹を立てちゃったんだよ。けれど、結局、払ってくれたけどね。相手が頭にこようと気になんかしないさ。払ってもらえばそれでいいんだ。

それからさ、印刷会社の連中って腹が立つんだナ。五十七部って予定なのにさ、連中ときたら四十七部しか送ってこないかと思うと、今度は六十七 部送ってくるんだからさ。(…)こっちがきちんと仕事をやってるのにさ、連中にそれができないなんてわからない話さ。仕事が嫌いなのはおたがいさまなのにだよ。

新聞配達やってて人ってくだらないし、ものを買うお金をそんなにもってないんだとわかってきた。それがいい人間になるのに役に立つかどうかわかんない。どっちかっていえば、わるい人間にしてしまうんじゃあないかな。だって、金をはらってくれない人なんてすきになれないもん。新聞代をはらっただけで、まるで恩をうったような気になるやつなんてすきになれない。そんなふうにして、つまり人の性格ができあがっちゃう。それもわるいふうにさ。新聞配達だって人間をつくるのに役に立つなんていうやつがいたら、そんなの大うそつきだよ。

この節のタイトル『誰がニュースをひろげたのか?』に対する答えは新聞配達の少年ということになるんでしょうね。恐らく12歳の少年たちは集金の業務はやらされていないのでしょう。14歳の彼が集金にまつわる悩みを持ち、そして微妙に人間嫌いになっているという感じです。地元に50部から60部の新聞を配達するだけの仕事ですら、例えば吠える犬がいたり、無駄話をする老人がいたり、集金に行っても居留守を使う人がいたりと、たくさんの障害が出てくるものです。ここでもほとんど意識すらせずに、労働の概観が示されてしまいました。さすがターケル。左派に支持されていたのもうなずけますね。