『A』を観ました

森達也さんが監督した『A』を観ました〜。

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マクザム (2003-07-25)
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森達也さんの本が全然分からないので、仕方なくレンタルしてようやく観たという感じでしたが…なるほど。なるほど。これは面白いです。シンプルに素晴らしいと思いました。もう少し短くまとめることもできたはずと思うんですが…欲張って2時間14分。かの有名な「転び公防」のシーンが1時間過ぎたあたり。ちょうど折り返し点で「グッナイベイビー」。これをカメラに収めた森さんの完全な勝ちですね。恐れ入ります。

オウム対警察(を含めた世間)、マスコミの狂騒、青年荒木の奮闘、この三つを全部入れようとしたことで、大変になっちゃってる印象が強いです。人によっては冗長とも言えるシーンがいくつかあるんじゃないでしょうか。いま改めて、これを編集し直したら面白いだろうなあという気分に駆られます。でもまあとっくの昔にそういうことは論じ尽くされていると思うんで、今さらどうのこうのはないです。広報の荒木氏を通じて、世間とマスコミのマージナルな部分を切り取ったものだと私は理解しました。であるからその領域にあるモノはすべて撮っていい。この続編である『A2』をまだ見てないですが、諸々の批判の上に仕切り直しているものでしょうから、きっと『A2』はいい作品になってるんでしょう。もっとオウム教団の深いところに行っちゃってるのかもしれませんね。

素晴らしいなと思ったシーンをいくつか。
オウムのことを取材したいマスコミの群れを半ば特権的に撮影しているシーンはたまらなくイイですねえ。マスコミの頭の悪さ、意地汚さが強調されてます。特にNHKだかの若い女性記者がインタビューしようとしてちぐはぐになっているところ。当時のオウムを追うマスコミは、特に現場は、自分たちのやってることがバカらしいことを自覚していたんだろうなあと思いました。これほどの大事件もあまりないので断じることはできないんですけど、事件の当事者とマスコミって共犯関係に近いものがあるんでしょう。よく分からないところから話を持ってきてなんとか相手に踏み込もうとして、さらに他社との陣地戦も同時に行う…いやはや、マスコミって仕事は大変ですよねえ。

麻原長女の記者会見のシーン、荒木広報の表情をきちんと撮ってますねえ。麻原長女に象徴される対決的な態度を、広報として乗り越えていくのはたまらなく大変でしょうねー。

あと荒木ギャルの醜悪な事ったらねえな! なんだろホント、これは個人的に嫉妬かもしれないんだけど、むかつくわ〜なんでオウムなのにモテんねんっていう。なんだよあの女どもは。気持ち悪い!

山科ハイツのところ。いいですねー。ここだけもう少しじっくり見たかったです。撮るべき素材がいっぱいありましたね。山科ハイツの管理組合というのは、張り紙やら看板やらの映像の節々で、なんとなく左派的な団結力が強いんだろうなと感じました。そこから発展するに、どうも西日本の方が、あるいは京都だからなのか、排斥の仕方が東京よりもエグそうだなあと、同和問題などについてもきっと同様の住民闘争があったりしたんでしょう、そんな歴史も感じましたねえ。

逆にいらないなあっていう部分は、荒木広報の里帰りですね。ここをオチに持ってきたのはちょっと味気ないなって気がしましたが…どうなんでしょうね。親がどうのこうのってインタビューも気持ち多かったし、ある種の映像編集の力技を感じました。まあいいや、論じる話じゃないですね、今さら。総じて、とても面白かったです!