農業 ピアス・ウォーカー

スタッズ・ターケルの『仕事(ワーキング)!』を読んでます)

インディアナ州南部で500エーカーくらいやってるという自称「びんぼう百姓」。トウモロコシと大豆がおもな収入源。都会に仕事を持つ妻、14歳の娘と暮らす。一番上の長男は大学を出てどこか他の場所にいる。

農業なんてギャンブルみたいなもんさ。天気とか価格とかすべてが関係してくるんだ。いい日がたくさんあるわけじゃない。実際、働く日が何日ある知ったら怖くなっちゃうよ。作物を植え付ける時にも、秋の収穫期にも同じようにかなりの日数がかかるんだ。百姓は天気を計算に入れてこういったことすべてをやるんだよ。ほんの少ししか日数がないんだ。天気に逆らいでもしてみろ、大変だよ。気ばかり張ってさ。雨が欲しかろうが、欲しくなかろうが、それぞれ違った形で影響してくるんだ。雷と稲妻を聞いて感謝感激することもあるし、今度は、あんなもの絶対聞きたくないのにってこともあるんだ(笑)。

これは恐らく、世界各国の農家の典型的な自嘲でしょう。農業については共産圏が頑張ったとは思うんですが…コルホーズだのソフホーズだの、みんな潰れちゃいましたよねえ。

毎日おおぜいの百姓がやめてってるし、状況はほんとに年々悪くなってるみたいだな。若い連中は親の跡を継がないんだ。以前は人口のおおかたは農家の出身だったよ。だけどそりゃだいぶ昔の話で、いまの若い連中は農業のことなんて気にかけてないよ。あれやこれやと、事情は分かってきてるね。百姓はギャンブルをしてるようなもんさ。

そして彼の息子もまた…。

いったん家を出て大学に入った連中はほとんど家にゃ戻ってこないみたいだな。将来性とか金のことにかぎりゃ、百姓してたんじゃダメだって分かってるんだ。それがせがれの心をここから離れさせる理由のひとつだな。もちろん、いつ心変わりしたっていいんだ。俺はそれを願っているけど…。

これアメリカの話ですけど、特に百姓は個人主義的な傾向が強いようです。しかし収穫物の価格を農家が決められないのはどういうこの時代にやっと団結していこうという話の流れになったそうですが…。

俺は嫌だなーーほんとは百姓たちゃそういうやり方を望んじゃいないんだ。腹の底ではねーーだけど、あるところまできちゃうと、これに代わる方法はないんだ。だからといっても、のっぴきならないひどい状況に立たされたり、農場を失いかけたりするときにゃ、百姓ってさ、普段ならやりっこないことでもやってのけるわけさ。

完全に自立した人間が、農業で自給自足で暮らすことは、あるところまできちゃうともう諦める以外にないってことでしょうかね。そうすると農業人口が大半であった時代がよかったのかというと、そうでもないわけでして。圧倒的に現代の方が住み良いんです。農業が割を食うのは仕方のない事なのか、という疑問が渦巻いている様子ですが、現在のアメリカの農業は、おそらくこの時代よりもさらにコストカットが徹底して効率化され、農業法人が輸出用の農作物をガッツリ作って補助金貰うようなやり方ですから、一匹狼ではさらに生きにくい時代になってるようです。

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それから初めてキーワード作りました。それがなんと→夏樹陽子