『グッドナイト&グッドラック』を観ました

『グッドナイト&グッドラック』を観ました〜。

グッドナイト&グッドラック 豪華版 [DVD]
東北新社 (2006-11-22)
売り上げランキング: 15786

2005年公開のアメリカ映画で全編モノクロ。まったく予備知識なく観たので、ずっと昔の映画かと思って観てました。とにかく細部の作り込みがすごいですね。1950年代のアメリカのテレビ業界の、一瞬だけジャーナリズムが光っていた時代の雰囲気がとてもよく出ているんじゃないでしょうか。いや実際どんなもんかは知らないのでなんとも言えませんけれども。ジャズとタバコの煙がモノクロの絵に完璧にはまってて、うわあセンスいい、かっこいい。映画好きにはこういうのたまらんでしょうね。物語も無駄を排して、わりと小さい範囲の場所でしか動かないので、役者の力量が試されるっていう感じがまた面白いです。

最後まで感情移入できる人が現れなかったというなかなか珍しい映画です。そりゃ表向きはレッドパージがあって、マッカーシーの実際の映像を織り込みながら、まずジャーナリズムがマッカーシーを暴き、続いてエド・マーローと会長が報道のあり方で対立する、申し分のないお話ではあるんです。しかし、まあ今の自分としてはエドと会長、どっちの言い分も分かるかな、といった感じでしょうか。twitterが出てくる前だったら、真のジャーナリズムとは云々と熱く語るのもありでしょうけど、今やエド・マーロー的な人は業界で生きて行くのはまず難しいでしょう。現在は受け手側のリテラシーの問題が露呈し、一方でテレビは常に「マスゴミ」と揶揄され続けるような時代です。CNNでさえも福島原発の話題ではいい加減な煽り報道をしていると聞きます。しかし、こういった状況でテレビ業界そのものをどうやって非難できるというのでしょう。誰だって世の中と折合いつけて生きているんだから。最初からテレビ業界は期待薄だったんじゃないでしょうか。この映画は、こういう人も昔はおったとさ、という昔話になっているような気がしますけれども、どうでしょう。それとも、映画の最後でのエド・マーローのスピーチ、あれが心に響かないほどに、自分が鈍感になっているんでしょうか。のちにカルチュラル・スタディーズの範疇であるメディア論やジャーナリズム論なりが明らかにしてしまうテレビの功罪そのものは、タバコを喫いまくっている当時のテレビ人と、この映画に差し挟まれるKENTのCMとの対比として表現されているような気がするんですけど、いかがなもんでしょう。

なーんて骨太なことを考えさせるってことは、やっぱこの映画は素敵です。しかしまあ、煙たいジャズの雰囲気に浸って観る分にはこの映画は最高なんですけど、やっぱり私は『トロピック・サンダー』でのバカなロバート・ダウニー・Jrの方が好きだし、クルーニーはいい役者ですがあんまり好きじゃないなって思いました。あとエド・マーロー役の人も怖い。これはもう、完全に好みの問題でしたねすんません。