『キング・オブ・コメディ』を観ました

マーティン・スコセッシ監督ロバート・デ・ニーロ主演の『キング・オブ・コメディ』を観ました〜。

スコセッシ&デニーロで、今年になって観たの、もう3作品めですね。「好きだ!」とか「惚れた!」って気持ちはいっさいないのに、なぜか借りてしまっているという…。「その気もないのになぜかスコセッシ&デニーロの映画を借りてしまっている」って怖いです。一体どうなってんだか。

振り返ってみると、『タクシードライバー』では「眠かった」、『グッドフェローズ』は「飽きずに楽しめた」と書いておりますね。なるほど初見の感想というのは大事ですね。この『キング・オブ・コメディ』を観た後の第一印象はどうだったかというと…「普通」でした!

いい役者ほど、変な狂った役柄をやりたがるもんなんでしょう。このデニーロのキャラは似合ってます。もともとタクシードライバーでも狂ってた演技が評価されたんですから、やっぱりデニーロは世界有数のウマい俳優ってことなんでしょう。いやあどうも、デニーロとかのクラスになっちゃうと、他人事なんですよねえ。なんでしょうね、デニーロだったらしっかりした仕事をするだろうと思っているからなんでしょうか、思い切った破綻というのがないと、どうもデニーロの演技自体が崩れないようだから、それはそれでつまらないんでしょうか。よく分かりませんがね、好みの問題でしょうかね。

そして相変わらずスコセッシ監督は、NYの街の絵を撮るのが得意なんですねー。さすがに映画音痴の私も3つも観れば大体分かってくるもんですね。あ、この人はつまり、ニューヨークを撮りたいんだなっていう。そしてやっぱり街角のシーンは最高ですね。ただそれも、監督が最高ってわけではなくてニューヨークっていう街が最高だって思っているだけかもしれないし。いやいやいや、劇中でジェリーが「観客は俺たちの芸を簡単だと思っている」と言ってましたが、実際スコセッシやデニーロの芸もそういうものなのかもしれません。「あ、きっと難しいんだろうな」ということさえも感じさせないレベルってことです。

多分それは大いにあり得ることで、狂ってることが普通に見えるデニーロの演技はもはや演技じゃなくて、デニーロが本当に狂ってる人なのかもしれないし、人生トータルで考えてみたら普通の人間よりも狂ってることのほうが長いと思われるわけで、そういうの自分でよくコントロールできてるもんだと思います。売れっ子俳優の人生ってのはずっと撮影してるんだから、ずっと自分以外の誰かでいるってことですよね。それを日常として受け入れるんなら、ルパート・パプキンという狂った男の演技なんて別に普通なのかもしれないなあなんて思ったりしました。しかもスコセッシ監督はじめスタッフ全員が映画の現場が日常だとしたら、やっぱり狂ったデニーロがそこにいるってのが日常なんであって、別に普通なんだろうなって。

というわけで、この映画の感想は「普通」なんすわー。もっと正確に言えば「え、普通なんでしょ、これ」という感じです。そもそもこの映画、ツッコミ役の位置にいるべきジェリー・ルイスもスター役だけにおかしい。途中ルパートの妄想だか現実だかのシーンもいろいろ入り込んでくるし、サンドラ・バーンハードとジェリーのシーンなんて、あんなロウソクつけたりしてシラフで観たら絶対おかしいですから。そういうところ気づかさせないくらいに、観客に狂うことを要求しているんじゃないかという気になってきます。んで、最終的には私は、そういう要求は「ウゼエ」と思った者でして。逆にそういう意識をしてしまうのが、スコセッシの腕が原因なんでしょう。またスコセッシを借りて観てしまいそうで、ホント、むかつきますね。