『寿限無のささやき』を読みました

立川談四楼さんの『寿限無のささやき』を読みました〜。

寿限無のささやき
寿限無のささやき
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立川 談四楼
暮しの手帖社
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花緑さんの本を読んだ時にそういえばと思い出した積ん読本です。「暮らしの手帖」という中高年女性向けの雑誌で連載していたっていうエッセイですね。小泉政権から安倍首相に代わったころの話が出てくるんですが、もうずいぶん昔のようにも感じますねえ。

落語本と一言でいいますけれども、個人的には文章と落語ってのはあんまり相性がいいとはあんまり思えねえんです。たいていは落語家が落語や落語界のことを語るものになるんですが、落語を題材にした物語となると、この談四楼さんの『ファイティング寿限無』が飛び抜けて面白いなと感じます。文才と落語の才能はなかなか両立しない、とは思いませんが、やっぱ文章で面白がらせるってのは喋りでするのとはだいぶ違うでしょう。いえ談四楼さんの噺がアレだって言うわけじゃないんですが、落語界一の文才があると思ってます。

とはいってもこの本は連載をまとめたエッセイ集ですから、軽い文章ばっかしでどうにもこうにもって感じです。ハナっから落語初心者向けに書いてる場合もあるんですね。まず落語家が普通の雑誌や新聞に連載を持ったらどうしても「寄席に来い」「一門会に来て」とかいうプロモーションになってしまいがちなんですよね。多才な人が多いから文章でお目にかかる落語家さんは多いんですけど、やっぱりみんなどこかで落語家が本業だという意識があるからそうなるんでしょう。伝統芸の世界という感じがします。

それでも前半の方の文章は好きですねー。「沢木耕太郎さんの隣のページですよ!」と言われて連載を口説かれたことにふさわしい、かっちょいい文章です。しかし後半に行くにしたがってずいぶんとヤッツケな文章になってるような気が…。雑誌の連載のエッセイって、馴れてくるのか、お客に媚び始めるか、飽き始めるのか、ネタが切れるのか、たいていこういう展開になりますね。その点、連載の小説は逆に面白い場合が多いですね。結末ありきとは言ってもやはり微妙に書いているうちに変わってくるんでしょう、書きながら物語の中を一緒に迷走しているんだろうなというのが見えるのがいいです。なんだかんだと言ってますが、こうやってまとまったエッセイが出ただけでも儲け物です。こっちとしてはまとめて読めるだけでもオイシイですからね。