どうしても文字にしたかった劇団ひとりの昔のネタ
すみません。今日はたまらなく眠いので。
劇団ひとりの昔のネタです。
あの日の夜、連日の仕事に疲れ、深い眠りについていた私の目を醒ましたのは、さわやかな朝日でも、愛くるしい鳥の鳴き声でもなく、不気味な音で燃えさかる真っ赤な炎でした。
火事です。
目の前まで迫った火の手から逃れるため、私は慌ててベランダから飛び降りました。そして振り返ると、真っ赤に燃えるマイホームが…。それよりも私は、恐ろしい事に気づいてしまいました。妻が、妻のセツコがまだ中に…。
『セツコー!セツコー!いま助けに、うああ!』
踏み出そうとした右足に激痛が走りました。飛び降りた際、挫いたようです。
そこに現れた救世主は、隣人の加藤さんでした。
『その足じゃ無理だ。ここにいて。奥さんは私が助けます』
そう言って加藤さんは、燃えさかる炎の中に飛び込んでいったのです。
そして私は、さらに恐ろしい事に気づいてしまいました。あの…あの…妻はあの、実家に帰っていました。(やっちゃったー。
いやあ今さらウソって言うんじゃすまないだろうなあ。
ほらあ加藤さん、もうちょっと燃えちゃってるもん。
いやでも、加藤さん、いい顔してるわー。
普段駅ですれ違う時とは比べ物になんない。
なんていうか生きてるって感じ。
まあ結局は死ぬんだろうけど)そこに現れたのは、加藤さんの奥さん、いや、未亡人でした。
未亡人は興奮して泣き叫んでいたので私は横っ面をひっぱたいてやりました『あんたがしっかりしないでどうする!』
世話の焼ける女でしょう? 焼けるのは加藤だけで十分だ。
罪悪感はあるかと言われたらもちろんある。しかし歴史とは傷みと犠牲の積み重ねです。
言うなればこれは平成版本能寺の変。さしずめ私は明智光秀。
残念なのは、肝心の信長が実家に帰っていることです。そしてしばらくして家の中からかすかに聞こえた声
『あれえ?いなくねえ?』いけない。部下の士気が下がっている。
『皆の者!ひるむでない!行けエエエええ〜!』