『天使』を読みました

佐藤亜紀さんの『天使』を読みました〜。

天使 (文春文庫)
天使 (文春文庫)
posted with amazlet at 11.05.12
佐藤 亜紀
文藝春秋
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佐藤亜紀さんのことを初めて知ったのは、実は本ではなくて、ネット上でしたねえ。twitterでもガツガツものを言うし、インタビューなどをちらっと見ても面白そうに某大手版元から文芸界までを挑発してますし、かっこええなあって思ってみてました。いい年こいてる自分がそうですから、若い人にとっては憧れの対象だろうなあって思います。ここまで毒を吐きまくれるってことは、いわゆる地頭がいいんだし、媚びない態度の表明でもあるわけですからね。

そんでいろいろ文句言ってる野郎がどういう文章書いてんだか、って興味を持つのはごくごく普通のことでして、読んでみた最初の本がこの『天使』でよかったんでしょうかね、いまいち自信が持てないんですけど。ああ、でもやっぱ媚びない人なんだなってのはよく分かります。はじめは何について書かれているのかさっぱり分からないんですが、結局読んでいるうちに分かってくる仕組みになっているのは、媚びないだけではなくて、テクニックに裏打ちされた優しさもあるんじゃないかと思ったりもするんですよ。

「感覚」を持った少年が、諜報機関に集められて成長して行くっていうお話です。

結局「感覚」がなんなのかを、具体的には、最後まで一言も説明してないんですけれども、感覚についての作者の思考実験というか表現の面白みが、実に楽しそうなんですよね。これは読者冥利に尽きます。この作品では、まさにこれがやりたかったんでしょうねえ。

この時代がいつなんだか、場所はどういうとこなんだか、さっぱり分かりません。興味を持って接すればもっといろいろ見えてくるんでしょうけれども、なんでしょうね、欧州フェチということなんでしょうか。お話の展開そのものは悪くないんですが、ラノベ的とも言えるような会話のやりとりはなかなか辛かったです。

で、うん、こりゃあもしかしたら、若い人向けなのかもしれませんね。やっぱ時代背景とキャラ設定がこのあたり周辺をグルグルするっていうだけだと寂しいっすね。こちとら別にナニオタクでもないわけです。ナニオタクでもない人向けに、ではナニを書けるのかというのも考えてみたら難しそうですけど、まあなんか書いたものをまた読むっていうだけなんですが。

佐藤亜紀さん、面白そうなのあったらまた読んでみたいです。