『大吉蕎麦』を読みました

城戸レイさん原作、橋本狐蔵さん作画の『大吉蕎麦』を読みました〜。

大吉蕎麦 1 (ニチブンコミックス)

漫画ゴラクネクスターに連載されていた、ちょっと珍しい蕎麦の漫画です。

蕎麦打ちの名人であった父親を交通事故で亡くした息子が、蕎麦打ち学校の特訓を受けて成長していく、という話から始まります。

初っ端からお話がどうも直球過ぎて調子が乗れませんでしたが、読み終わってみたらまあまあって感じの蕎麦打ち漫画でした。可もなく不可もなく。なんせゴラク読者、つまり私のことですけど、ゴラク読者ってのは、グルメ漫画の基準を土山しげる先生の名作『食キング』に置いてしまうので、単に蕎麦のウンチクを披瀝しながら主人公が成長していく物語を見せるだけでは、どうにも凡百の漫画から抜け出せないのではないか、という歯痒さがあります。とはいえ、ビックコミック系のいわゆる尾瀬あきら的な作風を期待しているわけではないのです。

まず特訓という物語のフォーマット、これはもう、『食キング』の北方さんと比べるのも恥ずかしい内容です。とはいってもまともに描けばこうなると思いますが。失敗ばかりで蕎麦粉を粗末にしやがって、とちょっと厳しく見てしまいました。まともな教官なら失敗した蕎麦を頭からかけたりしないでしょ、と思ったりするのですが、実際こういう特訓の現場を見たことないので、いるんでしょうかねえこういう人。食べ物を教える人が食べ物を粗末にしてたらアカンと思うんですが。もうこの辺りでね、なんだか入り込めない感じを受けました。

なんだかんだで特訓を終えて卒業するんですが、てっきり私はお店に戻って蕎麦対決にいくのかと思ったら、そうじゃないんですね。「新人蕎麦打ち大会」(warai)に出るために、今度は信州に向かいます。信州の蕎麦仙人ってのが出てくるんですが、教えているんだか教えていないんだか、主人公も学んでいるんだかどうなんだか、さっぱり分かりません。要するに読者として納得させていただいておりません。終始一貫してユルいんですねーこれが。許せないユルさと言いましょうか。完全に好みですけどね。

それでも本格的な蕎麦ウンチクが散りばめられているので、実際蕎麦への愛を感じます。図らずもネームから「蕎麦なんて貧乏な土地で採れるもので大した食い物じゃない」という印象を受けてしまったのは残念。結局のところ、「蕎麦とはなんぞや?」というところからお話を詰め損ねたって感じでしょうか。