『渡部昇一の日本史快読!』を読みました

渡部昇一の日本史快読!』を読みました〜。

渡部昇一の日本史快読! (ワック文庫)
渡部 昇一
ワック
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ワタクシ、これでもゴーマニズムの洗礼は過去に受けておりますものでして、結構よしりんの毒だか薬だかにあたったならば、ネトウヨの理論も韓国中国の反日の理論も、その論拠は常識として分かっているつもりではあります。まあこういう日本史の本を読むなんてこと自体が自分としては珍しいことなのです。これは明らかに、酔った勢いでブックオフで100円で買い占めた本のなかの一冊であったので、読まれたらすぐに捨てられる運命の本でありました。第一汚れが烈しいし、文章にはよく分からないところにボールペンで線が引かれてあるし。話は変わりますが、古本にボールペンで線が引かれてあることはよくあるんですけど、その傍線の引かれ方にこれまで納得できた試しがありません。前の読者はアホなんじゃないだろうか、といつも思ってしまいます。あれはどういうことなんでしょうかね。傍線を引くような奴がアホだってことなんでしょうかね。謎です。

さて渡部昇一さんです。別にどうという感想もないんですが、3.11以降やっぱり歴史とか世界とかの見方も自分のなかで随分変わっちゃって、文章の意味もまったく違ってとらえられてしまいます。これは自分に限らず、他の人ももちろんそうでしょう。この瞬間に、原発がどうのこうのとまだやってる時点で、なんといいますかなかなか世界史を大きく見るというのは難しいんじゃないかと思います。それでも渡部昇一さんは、まあ気持ちのいいほどに日本びいきで、歴史を解説してくれました。本当にありがたい本ではあります。しかしこれがそのまま2011年の現在時刻(Kダブシャインの曲にそんなのあった)で通じるかというとなんともいえません。

いいですか、まず日本史っつーのはですね、これ全部渡部さんの受け売りですが、信長から始まるんですっていう話。それから日露戦争で日本が勝ったことがひとつの世界史の大事件だっつー話。ゆえに信長のことを知らなければならないし、『坂の上の雲』は読まなければならないぞと言ってるようなもんであります。そりゃそうでしょう、まだ読んでませんから私はね。あんなもん読みたくもない。どちらかというと無条件に日本万歳って言える精神がくだらないと思ってますからね。むしろそうではないほうの文章、どちらかというと反日の文章を読んで、そちらを批評している方がまだマシだろうと思う者であります。司馬先生と一緒になって日本バンザーイなんて言う気には、今の私には、絶対になれません。それは右翼だ左翼だ関係なく、そういう気分なだけってことです。

そうです大事なのは気分です。日本がこれまでの歴史で為してきたことをいろいろ褒めそやしておりますが、これで読者の気分がよくなると思ったら大間違いだぞ、と自分は言いたいのです。日露戦争勝った、だからどうだっていうんでしょう。結局死んだ兵卒とその家族はなんだったんでしょう。戦争なんてのはね、前線に出ない偉い連中が勝手に始めたもんですよ。どの戦争だってそうです。私は日本の戦争責任という言葉についてしばしば考える時、例えば硫黄島ではアメリカ兵だって多数死んでいるわけですよ。その人たち、そしてその家族はどうなんでしょう。誰が責任取るんですか。戦争責任ということで言えば日本のエライさんと一緒に、アメリカのエライさんも処刑しないことには気が済まない、と本心では思っております。結局損するのは、貧しいから軍隊にでも行くしかなかった連中とその家族ですから。くっそくだらないことに付き合わされているわけですよ庶民は。昔から。頭に来る話ですよ。

有色人種でアジア人だけがどうのこうのっていう優越感をくすぐるような話にだまされてはいけない、と私は直感で思います。結局国連でもなんでも、国際的な尺度というのは白人連中が勝手に決めた話です。そこに乗っかろうとしていただけなんじゃねえの日本は、って視点は忘れてはいけません。私は、日本がアジア諸国に対して悪いことをしただのなんだのという勢力はクソだと思ってますが、それ以上に、日本がアジア諸国に対してなにかよいことをしたという視点もくだらないものだと思っています。国境なんてねえんだぞ、と。もともと国境なんてのがなかったら、朝鮮語と日本語のピジン言語が、対馬やその他九州あたりで使われていてもよかったかもしれない。しかも明治維新の話をするなら、会津はどうなんだっていう気持ちはどうしても拭えません。会津も、アイヌも、奄美も、沖縄も、結局くだらない闘争に巻き込まれただけなんじゃねえかと。だから『坂の上の雲』なんつー本は本当にくだらないはずだ、と思っていて、まだ読んでおりません。

いわゆる日教組の作った社会の授業を受けた記憶がありますから、それを解放したのはゴー宣だったし、この渡部昇一さんの本だってそれに近いものがあります。しかしもはや、自分の思うところというのは別のところにあって、国家間の線引きに庶民が巻き込まれること自体に腹が立つっていうことなんですね。原発の問題でこれはある程度明らかになってしまったわけですよ、国と庶民の関係がね。

そんな憤りをですね、思い出してしまいました。良本でした。ありがとうございました。