スチュワーデス

スタッズ・ターケルの『仕事(ワーキング)!』を読んでます)

スチュワーデスのテリー・メイソンさん。現在26歳。スチュワーデスは大半は田舎の小さな町出身で、彼女もネブラスカのブロークン・ボウっていう町の出身。

姉が5人いてみな20歳前に結婚した。航空会社に就職することが決まったら両親は二人とも興奮したそうな。ネブラスカ州って場所は郡の形が全部正方形か長方形しかないんですが、実際そういう場所からスチュワーデスになるってのは快挙だろう、と私も感じます。帰省すると、甥や姪はみなテリーのようになりたいと言い、姉は「スチュワーデスをやってる妹」と紹介する、といった具合で、誇らしい仕事であったことが窺い知れます。

お話としては、スチュワーデスの仕事は思ったほど楽ではないってところから始まります。スチュワーデス学校が厳しいぞと。それから実際の業務も厳しいぞと。休みが取れないし座り方も忘れるほどに立ち仕事ばかりしていると。

スチュワーデス学校では煙草の吸い方を学ぶんだとか。

女が自分で煙草の火をつけるのはよくない。手に煙草を持って待ってる。で、もちろん相手の男は正しい煙草の火のつけ方を知ってるわけ。火をつけてもらってるあいだは相手の目を見て、両手で囲って。軽いタッチとぬくもりが感じられる程度によ。(笑う)火を吹き消しちゃだめ。女が男の目を見つめながら火を吹き消すのがいいっていうことになってたんだけど、今は男のほうが火を吹き消すんだって言ってたわ。

読むとくだらないんですが、当時は真剣に煙草を奨励していたようです。会話が途切れたら煙草が役に立つ、みたいな意味で。だもんで彼女も会社に入ってから喫煙を始めたそうです。この時代ってまだ飛行機で煙草吸えたんですね、信じられん。

新入りのスチュワーデスはフライトする空港の近くのアパートに住み、そこで飛行場勤務の男や新米のパイロットなんかと付き合います。その後に割と大きな都市に住むようになるようです。彼女はシカゴに住みます。

スチュワーデス、これは浮気の代名詞よ。大都市では、私たちはだらしない女ってされてるの。ほんとにいやだったわ。『コーヒーとティーと私』とかいう本なんかいやね。

"Coffee, Tea or Me?"のことですね。コーヒーになさいますか、紅茶になさいますか、私になさいますか、という本ですが、和訳はないようです。1967年の小説で、70年代にはテレビ番組にもなってるようです。スチュワーデス人気だったんだろうなー。

飛行機事故に遭ったことはなかったのですが、乗客全員が脱出しなければならない事態には遭ったようです。今日死ぬかもしれないとはふと思うことはあっても、冗談として流してしまうのが習性になってて、それでも着陸が難しいって状況を一人だけ聞いてたそうです。新米スチュワーデスに知らせると混乱するからっていう。

そういうわけで二時間私ひとり胸にしまっておいた。今日死ぬかしら? 今日は復活祭よ。そんな時、飲物や食物を運んでるとオムレツが冷たいとか言って怒ってる客がいるのよ。私、言いそうになったわ。「ちょっと待って、あなた、オムレツのことでそんなに心配することはないわ」って。でも感じよくやってのけたわ。

なんだかんだで愚痴は言っても仕事してるんですよ、頼もしいもんです。

「結局なにがしたかったんだろう」とスタッズは聞きます。そこで「ネブラスカのブロークン・ボウを脱出したかったの」と言わせてます。