『できそこないの男たち』を読みました

福岡伸一さんの『できそこないの男たち』を読みました〜。

できそこないの男たち (光文社新書)
福岡 伸一
光文社
売り上げランキング: 20528

『世界は分けてもわからない』から間を置かずに読んだので、まあ相変わらずの福岡さんのカスケード(滝)のような美文、美構成が心地よかったわけですが、こちらの本は文学的なぶっ飛ばし方はなくて、どちらかというと「科学ジャーナリスト」「サイエンス・ライター」な印象を受けました。あんまり科学者としての自分(あるいは元・科学者としての自分かも…こんだけ売れちゃってるから)に引き寄せることはせずに、「オスを決定するY染色体とSRY遺伝子について」のテーマで終始一貫した内容でした。『生物と無生物のあいだ』とも話題は多少かぶっているためインパクトは薄まってますし、昔から女の方が優れてるんだぜっていう酒飲んだ時の話として有名なテーマですから、本書のタイトルであるテーマそのものは目新しくはなかったです。顕微鏡で初めて精子を見た人の話や、チンポとマンコがいつ分かれるか、なんつー話なんて、知ってしまった自分はもはやいつラブホやスナックでこのネタを話しているか知れたもんじゃないっていうほど。ちょっと大人向け、おっさん向けって感じでしょうか。まあもちろんそれは冗談として、性決定の遺伝子の研究での熾烈な争いの描写などは、実際にハーバードの医局にも身を置いていた福岡さんしかできない、ここはやっぱりアツイ部分です。

思ったんですけど、そもそも文学と科学って分かれているってのがおかしいんであって、福岡さんご本人もきっと切実に意識している点じゃなかろうかと思われます。科学はWhyには答えなくてHowなら答えられるってのが本書にも出てきますが、顕微鏡を覗いたそこに見える事実は、ホントは神の啓示にも等しい真理に近いんじゃないかと思うのです。一番文章を武器にしなければいけない、文章を飼い馴らさなければならない職業ってのは科学者だっていう、そのことは、雑誌Natureへの論文投稿などの話を見ても明らかではないでしょうか。青木淳一さんの本は「科学読み物」でした。あるいは昆虫好きの奥本さんはもっと詩的なのでしょうか。もっと読まないと私はなんにも語れません。すいません。