『無為の力』を読みました

河合隼雄さんと谷川浩司さんの『無為の力』を読みました〜。

PHPという版元はビジネス本や人生啓発の本が多くて辟易しますが、時たまどうしても読みたくなる本が出てます。経験的に、たいていは読んでみても大したことのない内容であることが多く、それでもこういった本を中心に出している版元が他にもいっぱいあるのはきっと本当に緊急に必要な読者もいるんだろうな、という程度に思っております。ただ、自己啓発本やビジネス本で「人生が変わりました!」って話は宣伝文句以外に聞いたことがないんですが…まあ人生が変わった気になれば、それはそれでオッケーという感じでしょう。

この本は河合隼雄さんと谷川浩司さんの対談本で、私にとっては両者ともに見過ごすことのできない本でした。ただタイトルに「マイナスがプラスに変わる考えかた」とか、帯には「不安なこころを癒し 希望を灯す 新しい生き方」だの書いてて、まあPHPなりのセオリーがあるんでしょうけど、どうしてもビジネス本に仕立てがちだよなあとちょっと顔をしかめてしまいます。その方針からすれば、対談者にも「ビジネス向けの話題でお願いします」っていうオーダーがあるわけでしょうしね、時間も限られた中で、臨床心理の話、将棋の話をそれぞれ絡めてなんとかそういう方向に収めようという力がはたらくとするなら、まあどうしてもこういう本になっちゃうんだろうなと諦めつつも、読みましたよー読みました。

谷川さんが40なったばかりの頃で、まだ羽生世代が30代のバリバリで、Jリーグでは岡ちゃんの横浜マリノスが優勝して、松井秀松井稼にアドバイスし、欧州サッカーではギリシャが優勝して、そしてなんといっても、河合さんがまだ超お元気だった頃の対談です。絡めようという意図はもちろんあるんでしょうけど、それぞれに面白い話題のカードを出していくもんですから、特に将棋指しの谷川さんはそりゃ面白いに決まってますんで、あとがきにもあるように普段聞き役に徹して人から話を引き出そうとする河合さんがなにやら相当しゃべくっております。当然小川洋子さんの対談本とも細かい話は被っておりまして(こちらが先に出版された本ですけど)、「無為の力」というタイトルの通りに河合さんは結構何も考えないでしゃべっている状態だったんだなってことが図らずも分かってしまって、面白いなあと。

河合さんも谷川さんも、相手と差し向かいで語る職業だから、どこか通じたんでしょうね。改めて思ったんですが将棋は面白いです。将棋のことを常日頃考える棋士という職業がたいてい面白い人というのもうなずけます。棋士本と落語家本は、もっと掘り下げて読みたいと思いました。

タイトルの「無為の力」という言葉からは、「無為徒食」のような、ちょっとアウトロー的なニオイもするのでしょう、文庫本では『「あるがまま」を受け入れる技術』と改題されてます。なるほどねって気もしますけどどうでしょう。技術う〜?

「あるがまま」を受け入れる技術 (PHP文庫 か 1-2)
谷川 浩司 河合 隼雄
PHP研究所
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