『岡本綺堂 (ちくま日本文学 32)』を読みました

岡本綺堂 (ちくま日本文学 32)』を読みました〜。

岡本綺堂 (ちくま日本文学 32)
岡本 綺堂
筑摩書房
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岡本綺堂の作品の選集です。解説は杉浦日向子さんでした半七傑作選から続けて読んじゃってます。これは多分ハマってるとも言えるかもしれません。

半七捕物帳の場合は、日本のミステリーや推理小説の元祖という扱いが強くなるでしょうが、もちろん綺堂はそれだけではないんだよというサワリだけを感じました。「半七捕物帳」から五篇、「三浦老人昔話」から四篇、他に「青蛙堂鬼談」からふたつ、戯曲がふたつで、ダブりはあったものの読みがいありました。特に「三浦老人昔話」は半七以上にピンと来るものがありましたねえ。

半七というのは、綺堂が言う通りに和製シャーロック・ホームズとしての物語のテイをとっているんで、半七老人に訪ねて話を聞く→誰だかが死ぬとか困ったりで半七が事件に絡む→謎を解く→犯人は死刑か島流しか、あるいはお叱りだけで済んだとか、その辺りがどれも一緒なので、自分の中にお話のネタとしてとっておけないもんなんです。タイトル聞けば話を思い出すかもしれませんが、たとえば飲んでる席で、あれはこういう話だったよと他人に話をしても、なんだかあんまり面白いようには感じない話が多い気がするんです。江戸が好き、興味がある、という人なら話も聞くでしょうが、自分は半七老人のように(つまり綺堂の文章のように)オモシロおかしく話せないので、これに興味を持ってもらうことが難しいのですね。

ところが三浦老人の方は、なかなかお話のスジがよろしくて、お話そのもので楽しめたのですね。半七が悪いってわけじゃないんですが、さっきも書いた通りパターンが同じ話だし、現代の法医学やそういうのに照らすと無理あるだろって話もあるし、その辺の無理スジを、へー江戸時代はそうだったのかもなあと納得して読んでいるわけですね。三浦老人の話の方は不思議な味わいのある話としても普通に聞けるし、ちょっとおっかない話としてならスナックのオネーチャン相手に話すこともできそうな気がします。

読書するってのは、別にお話を読みたいわけではないので、目的は別にあるんですが、やはり読んだ時に心に残るお話ってのは時代を越えても残るもんだし、心に残れば誰かに話してみたくなるもんです。「暗夜行路」や「伊豆の踊子」がどんな話だったか忘れてしまったとしても、『林檎の木』のお話のスジは結構忘れにくいでしょうし、映画だったら「プロデューサーズ」のお話のスジなんてかなり鉄板だろうと思います。このあたりは個人の好き嫌いによるんでしょうけどね。それにしても綺堂さん、とめどなくお話のネタを持ってたのでしょうねえ。スナック行けばモテたんでしょうけど、杉浦さんの解説読んだら酒も博打もやらない方だったそうですね。半七親分が酒を飲まないのはそういうことだったんすなあ。