『大転落』を読みました

イーヴリン・ウォーの『大転落』を読みました〜。


ウォーは「20世紀を代表するイギリスのユーモア作家」と呼ばれているんですが、今なら(笑)が付いてしまいそうな肩書きですね。ユーモア作家(笑)。日本で言うなら大正時代の、ふたつの大戦の狭間っていうんですか、その頃の本です。つかの間の呑気な風潮ってのが英国にもあったんでしょうかね。イーヴリン・ウォーは1903年(明治36)生まれ、1966年(昭和41)没。『大転落』Decline and Fallは1928年(昭和3)が初出のようでして、弱冠25歳で書かれたようです。ちなみに「ユーモア(笑)」が同様に寒くて辟易した読後感がよく似ていた長与善郎『竹沢先生という人』は1925年(大正14)刊行。


これ、同時代的に評するなら、スティーブンソン(1850-1894)だウェルズ(1866-1946)だの、おっさん文豪どもの冒険大作の後になんかネタやれと言われて書いた本だとすれば上策だと思います。しかし、現代のお笑いを経験している人間としてはっきりと言わなければならないと思うんですが、これは非常につまらなかったです。だるいッス。それでいて、富山太佳夫さんの翻訳ってのが、昭和のチャラ男やニューハーフみたいな柔らかいセリフも飛び出すというアンバランスさ。大正のカツベンみたいな翻訳だったらどうだったんだろう、とも思ってしまいました。一体どういうお考えでこのような訳を富山さんは採用されたのか、一度『笑う大英帝国―文化としてのユーモア (岩波新書)』は読まねばなるめえなあ。


それから、ウォーをコレ一冊で断じるわけにはいかないので、一度ご破算としましてもう一度なんか読んでみようかと。