『キプリング短編集』を読みました

キプリング短編集』を読みました〜。

ラドヤード・キプリングです。英国の作家です。

えーと、以下ちょっと個人的メモ。整理するために並べてみます。

セポイの乱 1857-1858
初代快楽亭ブラック 1858−1923
ラドヤード・キプリング 1865−1936
ジョン・ゴールズワージー 1867-1933
夏目漱石 1867-1916
宮武外骨 1867-1955
第一次ボーア戦争 1880−1881
D・H・ロレンス 1885−1930
第二次ボーア戦争 1899−1902
第一次大戦 1914-1918

なるほどなるほど。気が済みました。この年代あたりの英国モノが異常なほどに気になっております。特に読み物はハズレなしだろうなと感じております。日本における明治時代ってのもそうですけど、大英帝国の最後っ屁というあたり、時代の要請の力が非常に強くて、世界そのものが人間に直接なにか仕掛けてくるだろうという予感を、あちらこちらの天才連中が文章にしてるってのがいいですね。比較しても仕方ないですが、日本の文芸では「文明開化」なんてちゃちい四字熟語に閉じ込められてるようで、尺度が違うんすよねえ。その劣等感って、やっぱり日本人はいまだに根に持ってるもんなんでしょうかねー分かりませんけど。

さてキプリング短編集です。厳選された9つの短編が収められていて、すべて文句なしに面白いです。

領分を越えて

初っ端から「英国人にとってインドはまるで異界」と言ってのけるようなひどいお話です。ちょっとした怪談ですね。稲川淳二を思い出しました。

モロウビー・ジュークスの不思議な旅

蟻地獄みたいなところにドボンと落ちて出られなくなる、なんて設定はそんなにないから、たまには記憶力を発揮して、安部公房『砂の女』とよく似てることを思い出しました。お話は似て非なるものですけど。

めえー、めえー、黒い羊さん

インド生まれの筆者がロンドンに帰されて、乳母に大変いじめられて育てられた話に基づく、終始とってもかわいそうなお話でしたね〜え。

交通の妨害者

松本人志のコント的な雰囲気を想像しました。灯台守の神経が参っちゃって、「なんかずーっと縦のすじが見えんねん」と言い始めて、行動がエスカレートしていきます。最後は素っ裸になってるというのもコント的なんですよねー。

橋を造る者たち

ガンジス河に架ける橋の完成間近に大洪水が来て、テンパッた主人公はアヘンを摂取、そこからラリっちゃうんですけど、ま〜あ面白い。インドの神々が朝まで生テレビ状態で議論するんですが、ちょっと文明批判風な話も出てきて、なんだか記憶に残るいい話でした。ジャック・ブラックの映画にもラリッたシーンがありましたが、見ごたえとしてはこの作品のほうが凄いです。

ブラッシュウッド・ボーイ

本書の翻訳者でありキプリング研究の第一人者である橋本槇矩さんの解説が異常に助けとなりました。キプリングは幼少時より近眼で、ホモセクシュアルという噂もあったりして、ああなんだ、カポーティ的な人なのね、とすぐにイメージできました。その反動で帝国主義的エリートがよく出てくるっていうことらしいです。そんなエリートが子供の頃の夢を何度も反芻して生きていく話。この話を、作家自身の二面性として分析されているようです。

ミセス・バサースト

松本人志つながりで連想したわけではないんですが、南アフリカのイギリス軍兵士らがビール飲みながら「すべらない話」をやるというテイのお話です。

メアリ・ポストゲイト

ここからの2作品がちょっと時代が下った後期のもの。第一次大戦の頃の英国でのお話ですが、やはり戦争が絡んでくると違いますねー。

損なわれた青春

当時の文壇周りの人々のお話なんですが、けっこう複雑なトリックを使って憎たらしいヤツをだまくらかそうとしています。まあ基本的にヒマ人連中だったんでしょうから、距離を置いてみるとこいつらやってることは全部アホやのー、という感じがしましたよ。