『正倉院』を読みました
東野治之さんの『正倉院』を読みました〜。
すごくマジメな新書でした。東野さんもマジメやなーっていう文体で、読んでる途中に何度「なるほどな〜、ってマジメか!」と心の中でツッコミ入れたことか。なにしろこっちはまったくホントに驚くほどモノを知らない読者でして、読む話すべてが新しく、大変ためになりました。歴史好きの中でも、天平文化が一番好きな人ってのは割合としても少ないと思われるんですけど、これはなかなか、はまってしまいそうな世界ですね。
正倉院についての話題をたったこれだけに絞って解説していただいたのは大変ありがたいです。それぞれのトピックの面白さは、新書というよりも、コンビニで売ってる廉価版の「日本の歴史の秘密」とかいう本並みに楽しめました。それは私がまったくもって無知だったということだけが理由なんですけどね。せっかくなので、この本で無知蒙昧の私が初めて知ったことを章ごとに追っていきましょうか。
1 シルクロードとガラスの坏
ちょうどワイングラスみたいな意匠の宝物を、一見してシルクロードを渡って西方から来たと思ってしまうんですが、実はこれ、れっきとした中国産なんですよね、という話。9世紀頃に日本とインドなど西方の直接の交易は、まずなかったんじゃないの〜、という話です。
2 樹下美人図の下貼
屏風の絵の下貼に書かれた文を読んだら、それは当時の交易の申請書だったとかいう話から、宝物が「純国産か唐の産物か」という二択ではなくて、新羅使が持ってきた新羅産という可能性について指摘します。
3 輸入品と国産品
では宝物の、国産品か輸入品かを見分けるのはどうしてるかというと、まず文字や材質、出来のよさで探るってのがあるけれども、他にも手がかりはあるだろうか。十世紀くらいまでは、もう断然輸入品の方が格が上だった理由は、という話でした。
4 三彩を作った人々
で、そのうちこれはすごい国産品ですね、と言われる三彩陶器があります。国産説と輸入品説の長い論戦のあとに、現在は国産品ということになってるそうです。唐三彩とは明らかに違うんだそうですが、これを日本で作った渡来人の職人らの努力というのは八世紀ごろからすでに始まり、十世紀に結実したんだそうです。