『大江戸観光』を読みました

杉浦日向子の『大江戸観光』を読みました〜。

大江戸観光 (ちくま文庫)
杉浦 日向子
筑摩書房
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杉浦さんの本は大体トイレ&風呂本にしてるんですけど、ヒマつぶしの読書にはもったいないほど、杉浦節が炸裂しているいい本でした。まあこの本がどうのというよりも、杉浦さんの文庫は全体的にラクに読めるんでいいですよね。こういうラクさ加減というのは、江戸時代の黄表紙本を明らかに目指してのことなんでしょうね。

今読んでみて発見がありました。この本は、80年代後半の雑誌もろもろに掲載された杉浦さんの文章をまとめたというものなんですけど、この本の中で杉浦さんが現代と呼ぶ時代の雰囲気も、今と比べたらなんだか江戸時代みたいな雰囲気だなってことに気付きました。80年代ってのは出版業界も全然ラクで、それこそ江戸時代の版元みたいなやり方で大先生に書いていただいてワッショイっていう雰囲気だったんじゃないでしょうか。そんな軽い時代を反映している文章で、逆に江戸っぽくなっているところが面白いです。

それから、20代であった杉浦さんの立ち位置というのが、なんかセンセイというんじゃなくって、「江戸時代に詳しい女の子」であったんだなあと。まあ私よりも年が上の人ならなにを今さらって思うでしょうけれども、同時代にはまだ10代で江戸の話なんて興味もなかった私にとっては、新鮮な発見です。女の子だもんだからナメられるってのもあったんだろうなあと想像します。で、「歴史考証」というしかめ面した言葉からスルスルと逃げるような文体は、やっぱり味ありますよね。いかにも80年代の文章って感じがします。同じ時代の、他の作家が書いただらしない雑誌掲載の文章をまとめたようなエッセイ集なんてのは、なかなかそんなに読む機会もないですが、杉浦さんの場合はこれで正解なんだなあっていう気がします。

くだらない話がたくさんありますけれども、「江戸本を読む」という章で挙げられた本の並びを見て、しびれました。正岡容木村荘八長谷川時雨、今泉みね、「幕末百話」に「江戸の戯作絵本」、「旧事諮問録」…全部読みたくなってきましたよどうしましょうかねえ。