『江戸の下半身事情』を読みました

永井義男さんの『江戸の下半身事情』を読みました〜。

江戸の下半身事情 (祥伝社新書)
永井 義男
祥伝社
売り上げランキング: 24962

いかにも下世話なタイトルでなかなか期待通りの内容でした。最後の章は三面記事を並べただけのちょっとヤッツケだったなという印象ですけど、しっかりと文献を渉猟されていて、江戸の風俗が好きってのはこういうことを言うんでしょうね。「お嫌いですか」「お好きです」のやすきよ漫才のフレーズを思い出しました。

江戸時代のエロ事情を現代にたとえるあたりのオッサン的センスってのは、うーんなんかよく分かりませんけれど、祥伝社新書というブランドのなせるところなんでしょうかねえ。基本的に永井さんの考えは「江戸時代も現代も人間はそんなに変わるものではない」と繰り返し書いてらっしゃることで分かりますけれども、それでも立ちんぼやちょんの間、あと援助交際なんてのも、2011年現在はだいぶ廃れちゃった感があります。江戸時代は江戸時代、現代にたとえることもないだろうとは感じました。

吉原以外にも深川や新宿品川、あと陰間の話と、いろいろとエロ話の小ネタとしては充実していて大変タメになりましたが、一番大事なところは、江戸時代のエロを現代の倫理で見てはいけないってことですね。女性に人権はほぼないようなもんだったし、医療も衛生もひどいもんだったし、性病で死ぬのは当たり前だったんだから恥じる話でもなかったともいえます。吉村昭『敵討』では、熊倉伝十郎が最後に梅毒で死ぬんですが、どうもこの部分では熊倉が藩の金で品川に通って悪いことをしていたかのように噂されているような書かれ方でお話を成立させているんですね。それもそれで武士社会の間でのひとつの見方でしょうけれども、梅毒で死ぬのが当たり前だった世の中と考えたら、この部分の解釈も異なってくるんじゃないかと思いました。

ただ、昔のセックスは今よりもリスキーであったのは確かですが、人生の楽しみのひとつとしてやってることだったんだからいいんじゃねえの、って気分でもあったんだろうなと想像します。その点では「昔も今も変わらない」論には同意しちゃいます。