仮装集団

山崎豊子さんの『仮装集団』を読みました〜。

仮装集団 (新潮文庫 (や-5-8))
山崎 豊子
新潮社
売り上げランキング: 83675

高橋竹山の口伝本で「労音」の存在を知ったこともあって読んでみました。今となってはド昭和な内容なんですが、白い巨塔も読んでない私は、山崎豊子さんの真骨頂というのはどういうものなのか想像もつかず、大変申し訳ない感じで読んでました。要するにあんまりノリよく読めなかったんですね。こういう組織vs個人というのか、個人in組織というのか、特にそれ自体では興味のわかないテーマでした。

小説ってなんなんでしょうね。というのは、これ結構ドラマツルギーの本質部分についての自分自身への問いでもあるんですが、作品の中の対立構造ってのがご都合主義に感じるか感じないかの線って微妙なもんです。なんか知らんけど男と女が島耕作的な展開でセックスするし、それだけならまだしも、登場人物のセリフだとか所作っていうのがベタなドラマのようでして(実際ドラマになってはいないんでしたっけねこれだけが)、なかなか感情移入しにくいもんだなあと。興味がないからそうなっちゃうんでしょうけどね。

左翼の政治的な言い回しってのがあるじゃないですかー、語彙とか。あさま山荘の監督もそういうの体験してきたんでしょうけど、リアル感ってのを出すんだったら、それをトレースするだけじゃイカンだろと思うんですよね。むしろそういう部分は端折ってこその小説だと思うんです。吉村昭さんは、江戸時代のある地方の訛りや言い回しなんて分からないから、そこは必要最小限にとどめているみたいなことを書いてたのを思い出しました。一方で、財界の大物に囲われてるお姉ちゃんははんなりと京都弁で話すわ、弟はなんかイキった左翼学生みたいに話すわ、芸能プロのブローカーは大阪商人らしく話すわで、ああああ〜ベタ過ぎる、という思いは募るばかり。

とはいえ、素材はとてもいいよなあって思いました。まさに昭和といえばこれ、と言ってもいいような社会の対立構造で、社会派って呼ぶならまさにぴったりだなと。「社会派」かあ〜、なんでしょねえ、「非社会派」なんてのがあるんでしょうかねえ。テキトーな名前ですよね「社会派」って。