マン・オン・ザ・ムーン

ミロス・フォアマン監督の『マン・オン・ザ・ムーン』を観ました〜。

マン・オン・ザ・ムーン デラックス版 [DVD]
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アンディ・カウフマンの伝記映画、ジム・キャリー主演、ダニー・デヴィートも出てる、なんてな部分に惹かれて、期待してたんだけど、ちょっと期待が大きすぎたかもしれません。

この映画は1999年の公開だそうですが、この映画のおかげでアンディ・カウフマン再評価の流れができたことは間違いないわけで、今思えば先駆的な映画であったと言えるでしょう。ジム・キャリーが主演ということ、R.E.M.が曲作って歌ってる、ということあたりからして、懐古趣味ではなくって本当に若い映画ファン向けに作ったんですよという姿勢はさすがプロですねと思ってしまいますが、まあそれだけです。特にキませんでした。

この特にコなかった理由、実はよく分かっているんですよね。YouTubeでアンディ・カウフマンの動画見れば、本作品のエピソードの全てがあるわけですから、そっちを先に見てたりしたら、もうね、単なる劣化版にしか見えないんですよね。これ、1999年当時ではなかった感想でしょうね。出てきた7つ8つのエピソードのうちよいと思ったのは、大学でのライブぐらいですかねえ。そのくらい、あまりにも違います。YouTubeで観ることのできるカーネギー・ホールのライブ、トニー・クリフトン、TAXIでのラトゥカ、ジェリー・ロウラーとの抗争とデヴィッド・レターマン・ショー出演、ドキュメンタリー番組の「A Comedy Salute to Andy Kaufman」もあるし、もう全部が全然違います。あ〜がっかり。

ジム・キャリーはもちろん名優ですが、その如何にも名優っていう部分が嫌いです。この作品でGG主演男優賞獲ってるんですよねーなんだか。如何にも感というのは、本人が醸しだすのみならず、業界全体がこういう人に押し上げているっていう気がしますけどねえ、どうなんでしょう。

伝記映画ってのは難しい部分も多いでしょうけど、よくも悪くも制作陣の強烈な思い入れが左右するものです。今考えるとカポーティは良かった。なぜならカポーティは長生きした人ですからね、その分コクもあるし解釈のしようが様々にある。それからビギーもよかった。ビギーは逆にすぐに死んじゃいましたからね、人生の描写についてはそれほどブレないはずです。ところがこれは面白くなかった。上記2作品と比較する意味はまったくないんですけれどもね。

文句垂れっぱなしですけれども、なんつーのかな、特にひどかったのはジェリー・ロウラーとのプロレスのシーンですね。こればかりはもう、なんの感情移入もできないです。実際のプロレスの動画もYouTubeにありますが、問題なのはなぜメンフィスの観客が本気でヒートしているのか、その前後にどのような煽りが繰り広げられていたのか、パイルドライバーは禁止技であったこと、ジェリー・ロウラーは人気のある悪役であったこと、ここらへんは絶対に省略するべき部分ではないだろう、と感じました。この映画はプロレスをバカにしています、というかプロレスを分かっていない。プロレスに対して愛がない。こんなんでよくジェリー・ロウラー本人が出演を承諾したもんだと思います。リアルとフェイクを行き来したアンディ・カウフマンだからこそ、ジェリー・ロウラーのプロレスと共鳴できたのだということを、きちんと表現して欲しかった。これは一番残念だった部分です。

一方でフェイクではない部分、つまりYouTubeでは検索できないカウフマン本人の部分、例えばヨガをやったりとかドラッグやらないとかいう部分は、特にエピソードがないんでしょうかねえ、浅く掘っただけという印象を受けました。

どっから見てもまるで駄目な映画だとしか思えないような感想文ですが、そんなことないですよ。構成作家のボブ役をやったポール・ジアマッティは良かったです。もちろんダニー・デヴィートの見どころもあるし。しかし制作費が普通に高そうですねこれ…。