スーパーバッド 童貞ウォーズ

グレッグ・モットーラ監督の「スーパーバッド 童貞ウォーズ」を観ました〜。

そもそも、映画作品のどこに注目するかという問題なんですけどね、取り急ぎはまず役者さんだと言うのは素人考えの私にも分かるんですけれども、しかし役者が活きたり死んだりするのは役者のせいではなくてねえ、映画ってのは、監督や製作指揮をトップとした無数のプロの仕事が積み重なっているんだよ、という、本当にごく当たり前のことに気づかせてくれる映画、これこそが映画だと、思うわけです。そして本作品もまったくその通りで、観た者を幸福にする映画そのものなんですね。

モットーラ監督はインディの方でして、彼の撮った「The Daytrippers」という映画に惚れ込んで、脚本を書いたエヴァン・ゴールドバーグとセス・ローゲンがお願いしたそうです。セスとエヴァンのカナダのコンビ、それから製作のジャド・アパトー、このあたりのコネクションって今一番面白さを期待されているのかもしれませんねえ。数字も結果出してるわけだし、なによりもうるさい映画業界の中でくだらなさに徹して押し通すパワーはホンモノだなあすごいわあ、と、コメンタリーを見ながら思いました。本作は2007年なんですが、アパトーのプロダクションはすでに2005年にスティーヴ・カレルとの名作「40歳の童貞男」でヒットを飛ばしているわけですから、相当期待された上での製作であったことを思うと、こりゃ横綱相撲だなと感じます。文句なしにかっこいいですね。と、こういう形で、まずプロダクションから絶賛してしまう映画ってのは私にとっても珍しいです。

同時に湧き上がる、このアメリカ映画業界への羨望っていうんでしょうかね、日本の映画界に足りないどころかまったく存在しないように思われるプロダクションへの評価と眼差し、監督自身の頭でウネウネと考えだしたようなモノしか残していない日本の映画、脚本やセリフの一行ですら監督の付随物であるかのような日本の製作スタイル、まるでクソですね!クソ以下ですよ!なんつって!

というわけで本作品の内容なんですけれども、いきなり高校生が車を運転しているシーンから始まるんですね。まず最初にオープニングがバーケイズの曲から始まるという、実に痛快です。ノリのいい曲で車運転してるっていうのは、「スモーキング・ハイ」と同じですよー嬉しいですねこのノリ。音楽についてはこの作品は言いたいことは山ほどあるんですけれどもそこは端折って。いや本当に選曲がばっちりなんですよこの映画。

さてジョナ・ヒル「そのクソガキ」を演じていたジョナ・ヒルが高校生役で、まあアメリカだったらあんな高校生もいるもんだろうかと思って観てたら、名前がセスって時点で、最初の2分間くらい混乱しました。これはセス・ローゲンの実話を基にした脚本らしいっすけどどうなんだか。青春映画らしく次々と登場人物が出てくるんですが、偽IDカードを作った彼が出てきた時に「あれれ、こいつどっかで見た」と、またしばし大脳皮質を刺激しました。

答え合わせをしますと、名前はクリストファー・ミンツ=プラッセ。実は「ぼくたちの奉仕活動」で随分大きな役をやってた男の子だったんですが、観ている時点では、「ハングオーバー」で歯抜かれたり、顔に刺青彫られたりしたエド・ヘルムズにどこか似てて、混乱していました。彼はこれが映画初出演だったそうなんですが、いい味出してますよねえ。ジョナ・ヒルにも負けてないし、しかしこの両者、こうやって並べてみると、どちらもサイコなオタク役でハマっているわけですから、これ青春モノの「童貞ウォーズ」としては相当な人選ですねえ。キャスティングのお目の高さに感心します。

超大物コメディアンのビル・ヘイダーセス・ローゲンの警官コンビとは素晴らしい。どう考えてもメチャクチャです。この警官コンビだけでもシリーズ作れるんじゃないかと思いますが、まあ古典的ですねこういう考え自体がね。ちょうど40歳の童貞男のセスとジェーン・リンチのように、結構2人でダラダラ喋っているだけのシーンの大事さをよく分かって撮っているからなおさら嬉しいじゃないですか。制作陣がお笑いを分かっているか否かは本当に重要だし、分かってない人が多いから、松本人志が自分で映画を撮ろうって思わざるをえないわけでね、そういう点では日本の場合は、映画よりはDVDオンリーの作品に期待できる部分は多いと思うし、ダチョウさんとかマッコイとか、ならなんとか対抗できると感じました。

酒屋の駐車場でジョナ・ヒルをはねてしまうオッチャン役のジョー・ロー・トルグリオ、そして彼と喧嘩をするブラジル柄Tシャツのケヴィン・コリガン、どちらもスモーキング・ハイで観てるし、酒屋のレジ打ちのエリカ・フィリップスは童貞男で観てるし、つまりどれもジャド・アパトー製作ってことですね。納得です。

他には家庭科の先生のブルック・ディルマン、酒屋の店員ジョー・ヌネズ、エマ・ストーンよりもローラ・シーイ。キリがないけれども、またどうせ観ることになると思うので、しばらくはアパトー制作物はお預けってことにしたいと思います。

Superbad
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