「上岡龍太郎かく語りき―私の上方芸能史」を読みました

上岡龍太郎かく語りき―私の上方芸能史」を読みました〜。

上岡龍太郎かく語りき―私の上方芸能史
上岡 龍太郎
筑摩書房
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初版95年の時点と現在を比べると、すでにいろいろな点でお笑い事情も変わっています。なにしろ現時点ではすでにポストM-1時代、ノックさんも談志さんも(ついでに紳助さんも)いないという状況ですが、「上方のお笑い」の系譜を簡単に知ることができるんでその点ではとてもお得です。

まず、上岡さんのいた漫画トリオという存在が突出して革命的であったと、新しい風を芸能界に吹かせていたんだという点、その存在はロカビリーの出現とともに起こったひとつの事件であったと、そういう風に言い切ることができるんだろうなと思いました。現時点の何組かのお笑いトリオをパッと想像すると、トリオの系譜っちゅーのがあるのなら漫画トリオがほぼ始祖にあたるんじゃないかと、こう思いました。漫画トリオの時代にちょうどトリオのブームがあったらしいんですね、この本によると。なかなか漫画トリオは映像として見ることができないので残念ですねえ。

漫才というのは芸かという点では明らかに芸です。年をとるにつれて上岡さんも上方芸能の伝統に身を置いて安心したくなるとあるように、今のお笑い界の方も「いとこい」さん「ダイラケ」さんの伝統の枠に最後にはどうしても収まってくるんだろうな、という気がしてなりません。漫才をさんざんやり倒した人だったらきっとそう感じるに違いありません。それはそれで面白いなと思うし、そうなってほしいとも感じます。自然と所作もそういった師匠格に近くなってくるんだろうなと、そう思います。そうそう、漫才師ってなんかゴルファーみたいなイメージです。「型」は大事だ、と言われると特に若い時は「なんだと?」って反発したくなっちゃうんですけれども、だってしょうがないんですよね、最後に残るのは「型」しかないってのはこれ真理ですからねえ。

あと、どんな「新しいお笑い」も過去に必ずいるっていうのは感じましたねえ。おぎやはぎ東京ダイナマイト鳥居みゆきも、過去に必ずいるんだという確信はあるんですが、そういうデータベースが特に一般人の手にはないわけで、テレビ局やラジオ局に眠っているものがたくさんあるんでしょうけどねー。