『マイレージ、マイライフ』を観ました

ジェイソン・ライトマン監督の『マイレージ、マイライフ』を観ました〜。

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素晴らしい映画でした。ジョージ・クルーニーが演じるリストラ通告人の空の旅を巡るちょいオモシロ物語でして、原題は『Up in the Air』ですからそれほど邦題との差はなさそうです。ジョージ・クルーニーはなにしろ名優なのに過ぎるということはなく、『グッドナイト&グッドラック』の感想でも素人丸出しの私はそれほど印象を持っていないわけでして、このステルス的な評価というのが逆に名優の証なのだろうな、と今回も強く思いました。

そういう人を主役に置き、周りに配置する女優はヴェラ・ファーミガアナ・ケンドリックという美人で上手な人たち。大体はこの3人でお話が盛られていくんですけれども、なんかやっぱり私としては落ち着かないんですよねえ。制作陣のドヤ顔が常にイメージされるような内容というか。ザック・ガリフィアナキスやダニー・マクブライドという(ぶっちゃけ最初はこの二人を観るためだったんですが)、2大コメディ俳優の使い方も本当に上手で、その上手に使ってやったぜ的ドヤ顔感がにじみ出ていたというか。制作陣の意識の高さは分かるんですけれども、逆にそこが鼻についたとも言えなくもないかな、なんつって思いました。

付き合っている相手の自宅をアポ無しで訪ねたら実は…というシチュエーションは、キャメロン・ディアスとジュード・ロウのカップルでもありましたけれども、本作品でのジョージ&ヴェラの演出もよかったですね。それにしても、このシカゴの家を訪ねていくというシーンでもそうなんですけど、各シーンに至る動機づけがいちいち文句なしにきちんとしていることに驚きます。例えばジョージ&ヴェラが肉体関係を持つまで、アナ・ケンドリックがホテルのロビーでわめくまで、きちんと因果関係を思い起こすことができるし、そのシーンもチラッとあるんですよね。特にアナがメールでふられることを思わせるようなカットの挿入とか、心憎いですよねえ。

オープニングの映像と編集も素晴らしくてグイグイ引きこまれたんですけれども、いやでもね、実は…結局この映画で鳥肌立つくらいに感動したのは、全編見終わってからの予告編(オリジナル劇場予告1)を見た時なんですよね。ジョージ・クルーニーのゴールクエストとかいう団体でやってた「空のバックパック」のスピーチに合わせて、いろんなシーンがテンポ良く編集されているんですがねえ素晴らしかった。「We are not swans, sharks.」で終わるスピーチの尺にぴったり。

妹夫妻のパネルを持って歩く面白さも、IT企業のパーティのセンスも、解雇を通告されたザック・ガリフィアナキスの復讐劇の方も一本の作品ですよと言いたげなシーンも、上品な笑いです。これすなわちジョージ・クルーニーの上品さとも相俟っているんでしょう。なんか非の打ち所のない映画ですねコレは…なのに手放しで最高に面白かったゼ〜とオススメするに至らない感じ、困りますねこういうの。