『小悪魔はなぜモテる?!』を観ました

ウィル・グラック監督、エマ・ストーン主演の『小悪魔はなぜモテる?!』を観ました〜。

ま〜あ、まずアレですね、稀にみる最低の邦題ですね。原題『Easy A』から汲み取れる様々な意味を、まるっきり台無しにしてくれちゃっていますね。まあ、この邦題からイメージされるジャリタレ学園コメディ感は確かに作品中に充満しておりましたが、それとは裏腹に、随分知的で趣味のいいことやっちゃってくれるじゃないの、と感心しっぱなしでした。これはいい映画です。

Easy Aはヤリマン女という意味もあるのですが、結局のところはホーソーンの「緋文字」のエピソードに尽きます。カリフォルニアの高校生活に限定しているという点では、ジョン・ヒューズ監督の作品、特に80年代性春ラブコメの『ブレックファスト・クラブ』あたりをオマージュしてて、しかもそのジョン・ヒューズホーソーンの引用の使い方が、映画キチガイ的ではなく、「まあ別に知らなくてもいいんだけどね」という前置き込みでサラッとやってしまうところ、ああこれは、知ってる人にはたまらんだろうなと感じました。例えば『宇宙人ポール』なら、そのオマージュの熱量について語られガチなんですけれど、そういった風情をまったく感じさせないのはエマ・ストーンのキャラクターによるものかもしれません。

そうそう、まさにこれがエマ・ストーン。すごくいい。『ラブ・アゲイン』ではブスっぽく見えたんですが、本作品でも平均以下のバストサイズを強調してか、ズンドウっぽくも見えるんですよね不思議な事に。露悪的な、と言うのとはちょっと違うんですが、これだけ美人にも可愛らしくもブスにもアバズレにも見える、大きな器を感じさせる女優さんです。大麻だヒップホップだ、ロックだオタクだと、なにかヒトキャラ乗っけてくるタイプではなくて、ほんのりとその辺のサブカル臭を匂わせるだけでまったくニュートラルっていう、この人の売り出し方は相当イケてると思います。例えば友人役のアリソン・ミシェルカなんかと比べると、そのキャラの乗っけ方は感心しっぱなしです。大女優まちがいなしですね。やっぱりプレイヤーは、才能のあるプレイヤーと絡むと異様に力を発揮するらしく、特に母親役のパトリシア・クラークソンがノリノリ。直近で観てた『ラースとその彼女』では異様につまらんトーンを抑えた精神病医役だったので余計に驚きました。

映画の内容の方にもちょっと触れときましょうか。いかんせん私の興味のある話ではなかったのでそこまで熱くはなれないんですけれども、いかにカリフォルニアの高校生活と言えども、宗教、キリスト教信者、ジーザス・フリークが登場人物として挙げられてくるということは、それだけヤリマンであることの罪悪を作品として気にはしているよ、ということなんでしょう。基本的にヤリたいヤレない、私は『童貞ウォーズ』のような物語こそ学園モノだとは思っているんですが、本作品の主題はそれだけにとどまらず、おっさんの観客にも思春期の主人公の悩みをある程度でもいいから共有してみてね、とさらっと薄く提示する感覚がお気に入りです。

なんにしろ、エマ・ストーンの世界があるとしたら、こんな感じなんでしょう。また彼女主演のコッテリした映画を観てみたいと思いました。