『スーパー!』を観ました

ジェームズ・ガン監督の『スーパー!』を観ました〜。

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これはいい映画でした。観終わった直後、「映画って本当にいいですね」と言いたくなりました。もしこれを劇場で観ていたなら、スタンディングオベーションをしていたことでしょう。しかしこの映画を劇場まで見に行く場合には、当然グロなシーンも含まれるであろうという予備知識ありで行くのでしょうか。ジェームズ・ガン監督のグロいテイストはまったく知りませんでしたし、グロい映画を好きこのんで見るわけでもありませんので、逆に新鮮味があり楽しめました。『ゾンビランド』『ピザボーイ』ルーベン・フライシャー監督にグロい味がよく似ていたと思いますし、また映像やセットの殺伐感、アメリカ底辺層の臭いがプンプンするのも共通していたように思います。

まずは主役、レイン・ウィルソンの名演技ですねえ。シリアスとコメディのギリギリの線を行ったり来たりする、しかしどちらも中年男の悲哀をまとってのやるせなさが、こんなにもうまくハマるものかと思い感服しました。非現実、というか、夢幻の中を生きるのが俳優という仕事ならば、どんなキャラクターの設定であっても人間として必ず動機があることを演技で示すことができるわけで、彼はそれができる数少ない俳優だと思います。思い起こせば『ROCKER』も随分と有り得そうにないストーリーでしたが、彼の演技で夢幻のお話が地面まで降りてくるという感触でした。その魅力を本作では存分に発揮していたと思います。ただの哀しい中年をコメディとして演じているだけではない、単純にはそれでキャラを説明しきれない、何かこう人間の核のようなものが彼にはあるような気がします。もちろんスティーヴ・カレルでもジョン・C・ライリーでも、こういう役柄を演じるには十分過ぎるんですが、このちょっとサイコな「正義の味方」ができるのは、レイン・ウィルソンしかいなかったな、という気がしています。

それでいてコメディの助っ人としての、つまりレイン・ウィルソン扮するクリムゾンボルトの相棒ボルティー役を演じたのが、名子役上がりのエレン・ペイジであったことも素晴らしいと思います。一言でいうとそのキャラクターは常人離れしてて狂っているんですが、何かこう息を吐くようにアホなことを言うようなオカシイ女の子で、これは見事なハマリ役でした。あまりエロが似合うコではないと思ってたら、きちんと面白おかしいセックスシーンもやってます。昨日面白くなかったと書いた『ステイ・フレンズ』のミラ・キュニスとどこが違うんだろう…と考えたんですが、やはり男がイケメンかどうかで印象が変わってくるのかもしれません。単なる私のヤッカミ混じりというわけですが、まあ映画の好き嫌いなんてそんなもんでしょう。

シリアスな方面でのキャスティングもナイス。別れた妻役、リヴ・タイラーのヤク中演技はそりゃあ迫真だわなあ…と思ったりして。悪役ではマイケル・ルーカーの壮絶な死にっぷり、ケヴィン・ベーコンのいい台詞っぷり、どちらもさすがでした。物語の落としどころも捻っていて、好印象でした。まあ、オチ一つで印象が変わるわけではない種類の映画なので、どうでもいいんですけどね。

あと、レイン・ウィルソンが変身したクリムゾンボルトが、「割り込みやめろよ」のシーンなど、町中で悪党と乱闘するシーンは全部よかった〜と思います。乱闘自体が不恰好なのはもちろんダサカッコイイんですが、それを見守るなり逃げ惑うなりする周りの通行人たちの絵がたまらなくイ〜イんですよ。ちょっと昔の日本映画みたいな印象を受けました。アメリカンな悪趣味な絵の中にも日本のワビサビ感が生きているっていうんでしょうか、んなわけないかw。

この映画を観た後に、YouTubeでオープニングのヘタグロなアニメ動画を再び観ると、この映画のストーリーすべてが含まれていることに驚きました。このオープニングは素晴らしいの一言。『主人公は僕だった』のエンディングと肩を並べる仕事です。これはもっと賞賛されるべきですねー。