『JUNO/ジュノ』を観ました

ジェイソン・ライトマン監督の『JUNO/ジュノ』を観ました〜。

なるほどなー、やっぱり売れた映画はそりゃ面白いはずだわな、と。


2007年公開の本作は、私の興味からしたら当然行き着いてしかるべき映画でした。当初は、『Up In The Air』のジェイソン・ライトマン監督の、と言うよりも、『スーパー!』で大変よかったエレン・ペイジの出世作だし、見とかないとな〜、ぐらいの気分でおりました。そんでまあ、高校生が妊娠するという話でのエレン・ペイジという女優のポテンシャルを量ろうか、ぐらいに思っていたんですが、とてもそれだけでは収まらないほどのよい脚本で人物の配置がお見事、これに出演した役者は全員役者冥利に尽きるんじゃないかというほどそれぞれが光っておりました。


庭でポリタンクのジュースを片手に持つエレン・ペイジの姿恰好が、「ジュノ」という女の子と、さらにこの作品のキャラクターを決定づけているんですから、エレン・ペイジのための映画であるのは確かに間違っていないんです。オープニングの曲が終わったらすぐにレイン・ウィルソンのいる雑貨店で妊娠検査薬を買ってるように、この映画はエレン・ペイジ演じる高校生が妊娠したというオハナシですよ、とすこぶるいいテンポでパスを回してくれるんですが、やはりそのためには脇の役者勢の活躍が欠かせないわけで。


エレン・ペイジを主役にした時点で、誰が彼女を妊娠させたら面白いか、と考えた時に、なるほどマイケル・セラほどの適役はないでしょう。『童貞ウォーズ』で先に知ってましたが、このふたつの作品はどちらも2007年公開だそうで、彼にとってもダブルで出世作となったもののようです。マイケル・セラのひ弱さ、お子ちゃま感が、演出でグッと絵になってました。彼のキャラの絵作りによって、「高校生の娘をハラマセタ男」という見え方がひとまず脱色されている点が大事だったなあと感じます。そういや誰も彼を直接責めるようなシーンが出て来なかったのも、ああそういうキャラなんだろうなーという説得力がありました。


エレン・ペイジは、ほっとくと一人でも産んでしまいそうな勢いの、ワケ分からん特殊な女の子に見えるんですが、彼女にグッと寄り添う友達役のオリヴィア・サールビーがまたグッと来ました。エレン・ペイジに負けないくらいの存在感のある顔立ちをしてて、普通だったら映画でこういう2人を組み合わせないんじゃないかと思うんですけど、それだけ彼女の役も重要だったということです。カフェテリアでバカ食いしてるシーン、ショッピングモールでのシーン、親に妊娠を告白する時にも超音波で写真撮る時も何気なくいるっていう。ただそこにいるだけでもジュノが安心できるような、きっと心の支えにもなってるんでしょうなあと思わせるようなキャラでした。ジュノが規格外なだけに、やっぱり友達も規格外でなければという思惑がバッチリハマってました。この女友達の組み合わせって、映画の上では巧妙で、振り返ると『EASY A』でもエマ・ストーンに対してセレブ風味のアリソン・ミシェルカを置いていたのも確かに上手でした。主演の女友達役というのは、実際格落ちの女優を使うことにはなりますが、映画を評価する上での重要な鍵なんでしょうね。


さらにその上で、ジュノの父親と継母、J・K・シモンズとアリソン・ジャネイの組み合わせは、『ポルノ☆スターへの道』でのエドワード・ハーマンとミリアム・フリンの父母役のように、モロにテレビドラマ的での既視感を与えるような安心できる組み合わせ、というだけではなく、もう一段上の演技を要求される役柄でした。それぞれにジュノと絡むいい場面がありましたし、特に妊娠した娘を持った母というアリソン・ジャネイの役は、演技し甲斐のある大役であったでしょうなあ。眼力のあるいい女優さんでした。いつも時計かなんかの機械をいじっている父親役のJ・K・シモンズも素敵ですね。ジュノが破水した時に"thundercats are GO!"と言って病院に家族総出で行くところなんかは、超おもしれえなあと思いました。thundercatsは80年代のアニメで、つまりそういうことを知ってる変な女のコ、と分かった上でそれを見守る親、というテイがよく表現されていたと思います。


そして養父母になりたいという広告を出した夫婦、ジェイソン・ベイトマンジェニファー・ガーナーの役回りが、本作品のキモでした、と断言します。これ本当に脚本に恐れイッちゃいました。どうやら支配欲の強い奥さんに振り回されているらしい旦那のジェイソン・ベイトマン『宇宙人ポール』のエージェント役でも最高でしたが、本作でも途中でとんでもないことを言い出したところは、案の定ワタクシも「えーマジどうすんの」と普通に声に出してしまいましたw。スプラッタホラーや漫画やロックでジュノと話が合うっていう楽しい設定のおかげで、善良な普通の男の悩みが際立ちました。


そして、最後まで目が離せなかったのは、赤ちゃんが欲しくてたまらないジェニファー・ガーナーがどうなっちゃうのかってところです。最後の方のシーンで、アリソン・ジャネイがジェニファー・ガーナーと一言二言の会話をするんですが、とてもいいシーンだったと思います。女性の脚本家ならでは、と言ったら語弊があるか、でもやっぱり私のようなオッサンには絶対思いつかないシーンのような気がします。


最後に余計なことを付け加えますけど、エレン・ペイジの持ち味だけを見るなら、『スーパー!』の方が合っていると思うんです。彼女は絶対にきっついコメディが合っていると思うし、パンクスなりグロなりのテイストをなんなりとやりたい放題試せるような、そんな映画がいいに決まってます。この作品『JUNO/ジュノ』が売れに売れた理由は音楽がどうのと色々ありますが、ある意味で売れたことが、エレン・ペイジの先行きをキメてしまったのかと、そうすっとやはり『スーパー!』でのボルティ役は、丁度いい湯加減だったのかな、などと考えたり。まだまだ今後に期待してしまう女優ですねえ。