『Mr.ゴールデン・ボール/史上最低の盗作ウォーズ』を観ました

ジャレッド・ヘス監督の『Mr.ゴールデン・ボール/史上最低の盗作ウォーズ』を観ました〜。

こ、これは…『こ、』を付けて書くほどに面白くなかったです。こんな作品を作るなんて大したタマです。褒め言葉です。ほんとに面白くなかったんですが、規格外の面白くなさであって、なにかスケールの大きさ、ではないな、スケールの異常さを感じました。原題はGentlemen Broncos、つまり金玉ですね。

これを脱力コメディというんでしょうかね、この味は初めて知りました。SF世界に深く入り込んだものとしては『マーシャル博士の恐竜ランド』にも通じますが、SF小説の世界を徹底的にナメたといいますか、とても常人の感覚では耐えられない奇妙でシュールな絵ばかりが出てきます。これをSF小説界への批判と捉えるなら相当に角度の鋭い批判と言えるかもしれません。なんせもう、そこは何もないお話の世界なんですね。「お話」であるからには誰かが誰かに語るものなんですが、ジャレッド監督の描くSF小説の世界はとにかく自己満足で、語る対象がいなくても成立してしまう代物です。

そんな自己満足という言葉しか見つけられないお話の世界をここまで映像化したことは画期的なことかもしれません。だからこうやって観客である私が気がつくことができるっていうことでしょう。ジャレッド監督はジャック・ブラック主演の『ナチョリブレ』というオモシロ映画も撮ってます。これを知ってなるほどと思いましたが、「シュールな風景の中で小さな人間愛」という定式をイメージしました。かなりのヤリ手監督なんじゃないかなって気がしてきます。もう一本『バス男』も見てみようかと思いましたが。


役者勢ではジェマイン・クレメント。ファンタジー小説界の売れっ子作家、と役名だけを見たらありそうなんですが、このキャラが非常にインチキ臭くて、作品全体の臭いの元は彼にあります。逆に言うと、彼がいなかったらこの作品はどうなっていたかと思うと恐ろしいです。『ナチョリブレ』でも大きな役を演じていたヘクター・ヒメネスもいましたが、ガリガリの体型の通りにこの映画を支えるほどの柱にはなってませんしねえ。