『インビクタス/負けざる者たち』を観ました

クリント・イーストウッド監督の『インビクタス/負けざる者たち』を観ました〜。

インビクタス / 負けざる者たち [DVD]
ワーナー・ホーム・ビデオ (2010-11-03)
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こういう映画は本当に心から賞賛したいんですが、なんでかっていうと、老若男女、ウツでもソウでも、誰にでもオススメできるから、なんですね。歴史に残る名作の基準をいくつかまとめて軽〜くクリアしている、この映画力の差は一体なんでしょう。単に予算でしょうか。いや、単に予算だったりする世界なんだろうなあ、よく知りませんが。

お話は1995年のラグビーワールドカップ南アフリカ大会での決勝戦、南アフリカチーム対強豪ニュージーランド代表チームの試合が、ドンツキの落としどころになっています。『奇跡のロングショット』的なスポーツで勝ち進んでいく直線的なスポ根物語をイメージしてしまいますが、フタを開けてみるとまったく違いました。主役はもちろんチーム主将のマット・デイモンで間違いありませんが、少なくとも冒頭からお話が滑り出すまではネルソン・マンデラという人物についての映画でした。

まず新政権後の大統領の警護チームの待機部屋から、人種間の軋轢、マンデラ新政権での戸惑いが描写され始めます。この本筋とも本筋じゃないとも言えない微妙なエピソードから切り出すところに、上手な噺家のような匠の技を感じました。最初は黒人と白人が分かれて車に乗ってたんですが、後半にはお互いが入り混じって車に乗るんだろうなと思ったらそうなってましたねえ。ニヤリとしました。

お話全体にネルソン・マンデラという人間のとてつもない器、偉大さがどうしても出てしまうってのは当然ですが、それが観ていて苦にならない、御高説にならない工夫がされてて、気に入っちゃいました。モーガン・フリーマンの演技の功績によるところが大きいです。コレを観た後なら、ネルソン・マンデラとモーガン・フリーマンが同一人物だと信じ込んでしまっても仕方ないと思います。実在したネルソン・マンデラの顔がどんなのだったか、しばらくは思い出せないほどでしたしねえ。

マット・デイモンってすごい役者ですね。すげえわ…すごい。試合シーンは編集も上手でしたが、なにしろ本物に見えるってのはすげえなと。そりゃこの手の映画は、第一にリアリティを出すことに腐心するんでしょうけれどもねえ、マット・デイモンの本物ぶりは、この手の映画を何本か挙げても相当上の方に来るのではないかと思いました。

あと、会場の上をジェット旅客機が飛ぶシーンも大変よかったです。あれ合成でしょうかねえ、中盤から妙に合成した感のある飛行機のシーンがいくつか挟まっていたから、これはなにかあるなと臭ってたんですが…。いいエピソードでした、そしていい技術。いやあ、気持ちよく他人に勧められる映画ですねこれは。ネガティブな部分がひとつもないです。ヨカッタヨカッタ。