『バーン・アフター・リーディング』を観ました

コーエン兄弟制作、監督の『バーン・アフター・リーディング』を観ました〜。

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『スタンドアップ』のことを昨日書いたんですが、その中で重病に冒される鉱山組合幹部のフランシス・マクドーマンドについて一切触れなかったのは、単にこの映画の感想があとに控えていたからではなくて、実は私がハマってなかったからです。なんでハマらないのか、を考えると、露悪的なババア感が見て取れるという点なのかもしれない、と本作品での豪華メンバーの中での彼女の大活躍を見て気がついたのです。なにしろこの人、爽やかじゃないんですよね。全身整形して出会い系で男に会いまくる中年女性の、あるいは人間の、イヤーなところを結構突いてくるんで、無意識に語ることを避けたのかも分かりません。要するに直視できないほどの、すげえ怪物女優なんです。大抵の俳優はあー面白かったで通り過ぎるんですけど、この人、このオバハンは、味が口に残るっていうか、印象が異常に残るんですよね。一度この人の出た作品を過去からアレしないといけないなと思った次第です。

こういう豪華メンバーの映画だからどの役者から語っても間違いがないんで、しょっぱなからフランシス・マクドーマンドについて書いてしまいましたが、全体から言いますと、いやーまあホントにちょっとゼイタク過ぎる映画です。こんなのを観せていただいてもいいんですか、っていうほど。ただし、どこを見てもオッサンオバハンの豪華役者なので、その辺りさえ我慢すればねえ、最高に楽しい映画でした。それぞれが味を出し切るまで好き放題演じまくっている感じがしました。中でも飛び抜けてイヤーな人間臭い役をしていたのが彼女でした。キャリアのある役者がこうして集まると、いかに人間臭い絵を見せていくかの腕比べになってくる傾向があると思うんですよね。そんな中ではフランシスがもっとも美味しい役であったように思います。

そしてフランシスとセットで目にしてしまうブラッド・ピットのなんとも軽い役柄、この2人が、実にいい感じに、ちょっとだけコメディ欲を満たしてくれました。ブラピは頭の悪そうな役がホントに似合います。そしてやっぱりこういうブラピが愛されているんだと思います。きっと頭が悪いんでしょうね。いや頭が悪い人であってほしい、と願ってしまいます。

ジョージ・クルーニーは本作でも相変わらずのステルス感でした。演技がどうのとかはまったく論評の対象外で、誰も知らずともすでにその役柄として存在しているような役者です。この人の場合、基本的には何も演技するこたあねえやっていう余裕すら感じてしまって、そこにいるだけでモテまくるような気もするし、なんだろう…まあ、逆に言うとあんまり見応えのある役者じゃねえなっていう感じさえします。この人こそ本物だと思っています。まああんまり本物映画ばかり観るのも疲れるんでね、ほどほどに観るのが一番いいんじゃないかと。

蝶ネクタイのジョン・マルコヴィッチは、いつもの変なジョンでした。そしてリチャード・ジェンキンスもいつもの堅物のリチャード。ティルダ・スウィントンという人はまったく知りません。お話としては、CIAの上司役J・K・シモンズのセリフ通りで、こんがらがってんだけれども理解するには値しないお話、まあいい役者さんをいろいろ見られましたってレベルで満足しています。一連のドタバタ劇がスリル感溢れるかって言われるとそうでもないし、ただ音楽の効果だけはスリルとサスペンス的な感じに盛り上げるので、なんかその辺の作り方がもし違ってたらもっと別の面白い印象はあったかもしれません。煽りがトゥーマッチだったんですよねえ。これだけのメンツだから、どうせならもっとアドリブ満載のスッカスカな編集で観たかった気がします。

コメディとして見るならば、もう少しサムシングが欲しかったところ、なんて書いておこうかなっていう感じです。とりあえず。