『私の中のあなた』を観ました

ニック・カサヴェテス監督の『私の中のあなた』を観ました〜。

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いやー、超お得な映画でした。お話自体も、特にこうした重病モノに免疫のないワタクシにとっては感動作と呼ぶにふさわしく泣けるものなんですが、それ以上に本作品は、味わい深いキャスティングに参ってしまいました。いろんなシーンでいろんな役者の絡みが見られて大変ワクワクしましたよ。

キャメロン・ディアスのどこか過剰なウザイお芝居は、よくも悪くも確実に印象に残ります。彼女の強みは戯画的で、ラブコメ的な映画で発揮されるものとばっかり思ってたんですが、このお話のお母さん役にはそれがぴったりハマってて、スゲエ、彼女の最高傑作かも知れない、と思っちゃいました。ガン患者の娘を持つ母親の役なんですが、娘の病気をどうやって治すかに気持ちが集中するあまりに結構周りが見えなくなりかけていく、もう死にたい、お母さんに治療は諦めてほしいと最後には願ってしまう娘の気持ちから離れていってしまう…という設定が、彼女のシバイに実にしっくり来ました。私がウザイと思っている彼女の演技が、ちょうど周りの人々、特に訴訟まで起こすアビーをはじめとした兄弟たちが内心どこかで思っていた部分と、最後には一致してしまう…ってところに心が震えたっていう感じでしょうかね。キャスティングの勝利、そしてキャメロン・ディアスの大勝利という気がします。最後の方でガン患者役のソフィア・ヴァジリーヴァが「お母さんと二人にして」と言って始まるキャメロンとのシーンは、なんかこう、千秋楽結びの一番って気がしました。よかったですよ。泣けた泣けたいやマジで。

あと『50/50』でもありましたが、鏡に向かってバリカンでザクっと髪を刈る絵というのは、どうもガン闘病モノの映画では避けられないようです。キャメロンがザックリ行ってたのにはちょっと驚きました。まあアレ込みでウン億かと考えるとソレもアリかなと思いましたが。

あんまりアビゲイル・ブレスリンを推すとなんだか小さいオンニャノコ好きに思われるので、公の場では控えるようにしていますが、本当にこの子はデキル子役だと思います。どんな挙動も見逃せません。この作品と、『ゾンビランド』が、同じ2009年公開なんで、同じ時期に撮ったということですが、『リトル・ミス・サンシャイン』に比べると随分成長したもんだなーとか思ったり。なにしろアビーには華があります。この子を誰がどうやって料理するのか、出演映画が続々と連なっているんで、これからが本当に楽しみです。

いやあ…もうこの2人を書いたら十分…ってことはないんです。判事役のジョーン・キューザック父親役のジェイソン・パトリック、弁護士役のアレン・ボールドウィン、医者役のジェフリー・マークルも、それぞれ大きな役でした。特にジョーン・キューザック。息子を交通事故で亡くしたという設定が付いてて、涙を流すシーンも味を出しまくってました。

さて、この作品、結末についての話題は避けがたいところなんですが…。

実はこれ、原作では結末が違うんだそうですねえ。よくぞそんな重大な結末を取っ替えたもんだと思います。読まずに言いますけど、多分原作では、「私の中のあなた」が明確に語られる対象として最後まで残り、まさに物語の核心部分であろうと思うんですが、映画のこの結末でこのタイトルだと、結局何が何やら分からない邦題になってしまいましたね。本来ならば、というか原作ならば、母親は重病の姉を生かすために妹を生み、妹は姉を生かすために利用されて事故で死んでいくという、何かこう倫理的に許しがたい、救われない図式がまず物語を貫いており、そっちのほうが確かに深みがありそうです。しかし、この結末を取り替えた決断は勇気のあることだし、映画には観る者を救わなければならない義務があると感じているワタクシは、間違いなく映画の結末の方がいいんだろうな、と確信しています。