『スーパー・チューズデー 正義を売った日』を観ました

ジョージ・クルーニー監督の『スーパー・チューズデー 正義を売った日』を観ました〜。

スーパー・チューズデー ~正義を売った日~ [DVD]
松竹 (2012-09-08)
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例えば『ボビー』のような「政治モノ」と言いたくなりますが、実際に観た後は、マフィア映画みたいな感触が残ります。濃い俳優たちのツラに寄ってまず何よりも表情を優先して追うカメラに、いかにもジョージ・クルーニーが監督やったらこうなるだろうなっていう味が出てて、もし劇場の大画面で見てたら観客はむせちゃうんじゃないかと心配になるほどでした。いかにも「役者を観たぜ」って気になる映画です。

『グッドナイト・グッドラック』でも感じたジョージ・クルーニーの作風は、作品全体がマチズモ、男優主義的な観点で支配されている点です。主な出演女優が、マリサ・トメイエヴァン・レイチェル・ウッドの2人で、なんじゃこりゃ〜どっちもミッキー・ロークの『レスラー』に出てたね、と気がつけば、まさにこの女優の配置が男優主義を象徴していることがわかるでしょう。男同士の心理戦がヒシヒシと伝わってくるような「男の世界」の選挙戦を撮りたかったんでしょうねえ。

実際には、選挙の話はあまり関係ありません。途中からはどうでもよくなってきます。そりゃ皆さん揃って名優ですから、選挙絡みのセリフはサラサラっとこなしますがねえ…選挙戦の映画じゃなくても成立しそうな気がします。

しかし役者勢には、微塵も不満はないと断言します。全員素晴らしい。特に主役のライアン・ゴズリングは、ジョージ・クルーニーともフィリップ・シーモア・ホフマンとも存分に絡んでおり、特に名勝負はライアンvsフィリップ@星条旗の後ろ、ライアンvsジョージ@夜の台所、になりますかね。この辺の絡みの名勝負を思い出すと、どうしても実際にライアンとカラミをしたレイチェルウッドが印象薄くなるっていう…本作はある意味で同性愛映画かもしれません。状況の変化とともに心理が動くライアンのスリリングな演技は、いい仕事してましたねー参りました。

ジョージ・クルーニーフィリップ・シーモア・ホフマンの安定感は半端ないですね。画面に出てきた瞬間に、「あ、この人はこういう役なんだな」ってのが分かるというのは、もちろん役者だけのチカラではないですが、本当に映画のスゴイところだと思います。3人がバックヤードでスケジュールを密談しているシーンなんて、それぞれの役者に思い入れがあるだけに、さすがにこの絵はスゲエなあって思っちゃいました。『バーン・アフター・リーディング』でも思いましたが、有名な役者をいっぱい揃えましたっていう映画にはこういうお楽しみがあるからいいですね。最後まで、役者を見せるための脚本、という印象が強かったです。

おっと、ポール・ジアマッティもよかった。対立候補のブレーン役。またまた地味だけど、大きな役でした。取り急ぎ書いときます。