『ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して』を観ました

デヴィッド・フランケル監督の『ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して』を観ました〜。

「バードウォッチング映画」という驚きの企画ですが、残念なお子ちゃま脚本でした。企画はよくても脚本が…というのは、私のイメージの中の邦画失敗作と同じパターンです。素敵な役者揃えて作ったものの、フタ開けてみたらまあこんなもんだった、てな感じでしょうか…いやいや、見ようによっては、恋、破局、引退をバランスよく盛り込んだ、発注通りの脚本とも言えます。

「The Big Year」という1年の間に北米でもっとも数多くの種類の鳥を見た者が勝つ大会があり、3人の男たちがこの大会で競うという内容です。鳥の鳴き声を聞き分ける才能を持つ会社員のジャック・ブラック、鳥を見るために引退を決め込んだ会社社長のスティーヴ・マーティンが、前年度大会優勝者のオーウェン・ウィルソンに挑みます。この大会、記録は自己申告だっていうところがミソで、いくらでもインチキできそうなんですがそうはならないのがマニアの世界はどこも一緒ですね。

映画は年の始めから始まって大晦日まで3人が鳥を見まくる時間軸通りに進み、その間に各人が私生活でいろいろ起こるわけですが、まあ鳥を見るのに夢中になってるマニアたちですからそりゃあいろいろ起こるってもんです。前年度チャンピオンがライバルを嵌める手口はお見事でした。アッツ島に行く飛行機の中でオレオクッキーをすすめるくだりは気に入っています。結果何も起こらないんですけど。

観客は、追いつ追われつのデッドヒートの争いを期待しつつ観ることになるんですが、各人に起こるさまざまな事件のフラグや伏線がくっきりとしていて、アサハカとも言えますが、分かり易いとも言えます。何かのマニアであれば結構心の痛むシーンもいくつか出てきますが、それを見せられてもなあ…苦い心持ちです。なぜ心苦しいか、理由はひとつ、悲しい思いをする奥さんの役が、『ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬』で超気に入ってしまったロザムンド・パイクだからです。どうしてこれほどの美人を悲しい目に合わせるのかなあ、お前はアホか…と、おそらく多くの観客が思うでしょう。そして、悲しい目にあってしまう奥さん役に、どうしてロザムンド・パイクを選んじゃったのかなあ、お前はアホか…とも思います。ああーもう、もし自分がロザムンド・パイクと結婚したなら、趣味はすべて捨てると思います。それが並の男です。オーウェン・ウィルソンは、それでも捨てないから世界一なのです。そういう役回りを演じたオーウェン・ウィルソンにも拍手したい。こう考えると、いやあなかなかタフな役回りですね。キャスティングにも妙味があると言えます。

しかしまあ、実際は出演している役者は、台本に書いてある鳥の名前は読んだらすぐに忘れるくらいの感覚で仕事しているでしょうし、お笑い控えめのジャック・ブラックも今回はそういう仕事に徹しているんだなっていう気がしました。だからあまり「ジャック・ブラックの映画」として期待して見てはいけないっていうことですね。そこは申し訳ありませんでした、期待しちゃってましたって感じです。