『ローラーガールズ・ダイアリー』を観ました

ドリュー・バリモア監督の『ローラーガールズ・ダイアリー』を観ました〜。

いっやあ〜、エレン・ペイジは持ってますね。『JUNO』での成功が彼女にもたらした効果は明らかで、なんといってもこの世代の女優では珍しいくらいに、いい脚本、いい演出にどんどん巡り会えているって感じがします。

この映画は子役からのキャリアを数えたら超ベテランのドリュー・バリモア初監督作品です。「初監督」とは言っても実力派の役者が揃っているし、その上エレン・ペイジが主役ですから、結構当てにきているムードがピリピリと伝わってきます。だって、なんつってもローラーダービーですよ。70年代に大ブームをもたらした、テキサス州オースティンで流行が復活しているスポーツゲームの映画。エレン・ペイジにまた女子高生役を当てはめて、主役は親の反対を押し切って野蛮なローラーゲームに加わる、ワ〜オ、よくわからんけど売れそう! となるじゃないですか〜。きっとそうなったと思うんです。

私は興行収入はあまり興味がない派なんですが、実際この作品が当たったのかどうかを検索して見ると、少なくとも大当たりってことはなさそうで、実際封を切ってみたらお客さんを限定させちゃった点は確かに否めないでしょう。

んなこたどうでもいいのです。

私がものすごーくこの映画を気に入った点は、監督としてのドリュー・バリモアが、きっちりと撮りたい絵を撮っているなあと感じたからです。Oink Jointという名前のバイト先の外観(でかいピンクの豚が屋根についてます)、車のキーを探す草原のシーン、イチャイチャしてエッチもしたであろうプールのシーン、ぐっちゃぐちゃに食べ物投げ合う乱闘シーン、ローラーゲームの会場となる倉庫のロケーション、それぞれが個性的で、全体としてのまとまりよりも、それまでに温めていた絵を出し切ることを優先した、実にフレッシュな映画です。

今回の女子高生エレン・ペイジのBFF、親友役は、アリア・ショウカットという女優さん。彼女は人気ドラマ「Arrested Development」のレギュラーです。なんつっても上手なんですよ、二人の組み合わせがいいの悪いのと論じるまでもありません。どちらも上手な分だけ、なにかこの二人の関係だけを見ていると、ちょっと女子高生とは言えないなあって気がしましたが、まあそのへんはご愛嬌っすね。

お母さんはマーシャ・ゲイ・ハーデン、お父さんはダニエル・スターン、いかにもテキサスのロウワーミドルを思わせるラインや演出が面白かった。一度家出した主人公が戻ってきた狭いキッチンのシーンは、実にいい絵になってたと思います。全体の中で一番いいシーンを挙げるなら、私ならアソコを推したいところです。

ローラーダービーのチームの面々は、女子プロレスを思い出させるキャラ作り。監督自身が派手なウィッグで出演してたり、クリステン・ウィグジュリエット・ルイスなど、メイクを派手にしてタトゥーをバリバリ入れてるんだけど、アレみんな結構年イっちゃってるよね…という女優のキャスティングは、なにか実際のローラーダービーの現場もこういうタフな女たちがいるから運営できているんだろうなあと、なかなか胸に迫るものがありました。オースティンに集まるこのタフな女たちの、それぞれのエピソードを描きたいところなんですけど、そこをグッとこらえたんでしょう。

原題"Whip It"のセンスが好きです。いかにもオースティンのお話っていう、大雑把な語感です。お話の内容も、この大雑把さからすれば十分にディテール詰めているように思えるわけでして、アラ探しする気になりませんねえ。でも何か一つアラを挙げるとしたらそうですなー、エキストラ入れたゲームのシーンが大雑把でしたね。戦略スポーツとしてのローラーダービーをも少しきちんと見せたほうがよかったんじゃないかなーと。練習しないから万年最下位という設定のチームはいいとしても、優勝チームはなにがすごいのか、は見たかったです。「ジャンプがすごかったわよ」なんつってもこれはどうも…ってぐらいで。だからまあ、スポーツものの映画として見るなら並です。そこはまあ、面白かったから許します。

あと、選曲がよかったです。ドリュー・バリモアのセンスなんだろうと思います。

Whip It
Whip It
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