『グラン・トリノ』を観ました

クリント・イーストウッド監督の『グラン・トリノ』を観ました〜。

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クリント・イーストウッドが監督、さらに主演もこなしているんだから、年齢のことを考えたら、ただただスゴイとしか。

本作は「老害モノ」と言えばいいんでしょうか、探せば結構ありそうです。ウディ・アレン『人生万歳』という映画もこんなジジイが出てきてギャーギャーうるさい感じでしたね。「身寄りのない老人vs世間」という構図からスタートして、次第に打ち解けていく過程をお話にしています。主人公は大した差別主義者でアジア人が大っきらいという設定で始まり、隣のアジア人家庭と徐々に交流を深めていきます。

ニック・シェンクの脚本がとてもいいんです。お話の掴みがよくて、冒頭での葬式シーンから、主人公の二人の息子たちの家庭との薄い関係を見せる、すると頑固で孤独な老人のキャラの輪郭がはっきりしてきます。イチイチこういうことを書いてもしょーがないんですが、キャラ造形のためのスクリプトが理路整然としてるのが透けて見えてくることは、さすがだなと思う一方で、なんかイヤだなって思う部分でもあります。例えばモン族のお姉ちゃんとクリント爺さんの会話なんて、とても上手に最小限の言葉で状況説明、歴史的な解説をしてくれちゃってます。ノリでテキトーに喋ったようなテイがあれば、ホントは最高なんすけどねえ。

もうひとつ、「老害モノ」のほかに、「異邦人モノ」の要素もあります。頑固な東洋人嫌いの爺さんが、隣のアジア人家族で催されたパーティに迷い込み、何を言ってるんだか分からない人がいる中で、思いがけず自分を発見してしまう、というパターン。こういうシーンを簡単に撮る人ではないなってのは、『硫黄島からの手紙』でもすでに分かってるんで、ホントかどうかアヤしい描写でも、不思議と信用できそうな気がします。この辺りは、観客とクリント組との間の信頼関係がものを言いますね。

オチは…オチねえ、オチがなあ…ほかのオチだったらどうなってたんだろうと考えてしまいますね。珍しくそういう気分にさせるのがクリント映画のよいところ。グラントリノごと突進して大炎上、最初からグラントリノなんてなかったんだってオチ、あるいはギャングに無残にぶっ壊されて、息子の日本車に乗り換えるってのもアリかもしれないです。あるいはヘソ出してるアホな孫に譲るってのでもいいし。様々な可能性のある中で、グラントリノを最後まで残したことの意味は…なーんて考えませんよ私は。そういうこと考えさせるように仕向けてるんだからこの映画は。「ダーティ・ハリー」のセルフカバーの件についてもしかり。まあ、いろいろ含みを持たせたオチという点では、最良の選択なんでしょう。

と、いう感じで、ストーリーについて結局語ってしまうでしょ。もう観ねえぞ、といいながらも、まず間違いなく観てしまうでしょうねえ。なんだかんだで美味だし。なんとなく暗い作品が多いから、時々イヤんなって愚痴っぽくなっちゃう、それがクリント映画なんです。