『だれもがクジラを愛してる。』を観ました

ケン・クワピス監督の『だれもがクジラを愛してる。』を観ました〜。

いいもん見ましたよー。コメディとして楽しめました。

もちろん本作はコメディ映画ではなく、実際にあった話を映画化したものなんですけど、そこで繰り広げられる人間のシリアスな所業が、俯瞰で見るとコメディとして目に映るということです。人間とはこんな馬鹿げたことをやってのけるんだ、という、ある種の感動すらあります。バカばっかですよ人間界は。楽しいです。

これがコメディと呼べるのではないか、と気がついたのは、ミネソタ州から来た除氷機のベンチャー二人組とソ連砕氷船のシーンです。ベンチャー二人組の片割れは私の好きなロブ・リグルが演じてるし、砕氷船の運転室は急にセットがセコくなり、ウォトカで乾杯するよくわからんロシア人シークエンスが挟まってて、CGやロケ映像の真剣味との落差に笑っちゃいました。二人組と砕氷船を挟んだことが、これだけ印象に残るってのも、映画としてのスキルの高さだと思います。

そうやって見ていくと、主演のドリュー・バリモアが演じたグリーンピースの人も、うわーもう実にこの人らしいキャラクターでした! 「アラスカの氷に閉じ込められたクジラを救おう」という提案がいかにバカげているか、を客観的に、真摯に受け止めた彼女自身の鋭い演技プランが感じられました。この人って、きっと、監督作の『ローラーガールズ・ダイアリー』が示すように、ものすごくバカなことを真剣にやってる人への愛があるんでしょう。

アラスカでの珍ロケも楽しめました。あんな広い氷原の中、ずいぶん狭いポイントで撮影したんだろうなあと思わせる絵の狭さ、特に穴の周辺での撮影が、予算の厳しさを物語ってました。そりゃあアラスカだもの、いくら金あっても足りないでしょう。しかしその一方で、クジラをどうやって動かしたのか、氷の下の風景はとても自然で、感動的な絵に仕上がってます。これにはやられました。

実話の映画化とは言いますが、実話とは結構離れて、いろんなキャラの作り方もコミカルでした。ヘリの操縦士や大統領秘書、石油会社社長や州知事あたりはお堅いキャスティングでしたが、私が気に入ったのは、クリステン・ベルが演ずるLAからやってきた出世欲の強い女性レポーター。特にクリステン・ベルは、箸にも棒にも…な具合がとてもいい、バカ殿様で言ったら優香的な重いポジションを軽くこなせる「いい湯加減」女優の一人です。名前を挙げたらこの手の半ガチコメディ美人女優っていっぱいいますよね。

世界最北限のメキシコ料理屋の店員のネタかぶせも、軽妙で皮肉も効いているという小ワザ。こういうの見つけちゃうと、たいていその作品を好きになっちゃいます。