『ゴーン・ベイビー・ゴーン』を観ました

ベン・アフレック監督の『ゴーン・ベイビー・ゴーン』を観ました〜。

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見てよかったなあと思いました。色々と腑に落ちました。

2007年の作品です。ちょうどベン・アフレック初脚本の『グッド・ウィル・ハンティング』の10年後に初監督作品なんて、シャレてますねえ。しかも絵にしたかったのはとにかくボストン、地元のボストン、生まれ育ったボストン。全然関係ない私もボストン魂が揺さぶられました。クリント御大のボストン撮影のミスティック・リバー』が2003年。ボストンと児童虐待、2つもワードというかテーマが被っているのはこれどうなんだろまずいんじゃないの、と思いますが、それでもベン・アフレックが撮りたい、やりたい絵というのは明快です。『ローラーガールズ・ダイアリーでも思ったんですが、やっぱり映画制作に必要なのは、撮りたい絵があるという情念ひとつで十分なのではないかと。「初監督」作品はこれがあるから楽しいですね。

腑に落ちたといえば、ベン・アフレックという人の個性もそうですけど、エイミー・ライアンという女優の素晴らしさもあります。本作が彼女の出世作となったようでして、これを踏まえての『Win Win』でのあのキャラクターがあったんだなあと、振り返っております。演技の強い下地を感じます。さらに彼女のキャラクターに関して言えば、演出の緻密さが窺い知れます。こういう母親がいるんだよ、実際に見てるんだよ、という、ここは地元民でしかこだわれない部分だろうなと思いました。例えば『ミスティック・リバー』でのマーシャ・ゲイ・ハーデンと比べると、いやもちろんどちらも優劣つけがたい「ボストンの女」なのですが、ここは地元民として譲れないというベン・アフレックのこだわりが感じられました。そうやって考えると、全体的にクリント御大を意識せずにはいられない、かなり対抗心があったんじゃないかな、なんて想像したりするのもまた楽しいっすなあ。

主演のケイシー・アフレックと相棒のミシェル・モナハンのコンビは、本当はもっとシリーズ物で見られるような探偵コンビでもよかったんじゃないかなって思いました。どちらも脇役が多い二人だから面白い組み合わせですけどねえ。二人は結局別れちゃったんでしたかね、続編あれば見てみたい気もします。このボソボソとした静かな探偵カップルに対して、イケイケ刑事のエド・ハリスとジョン・アシュトンのベテラン二人組が置かれたことは素晴らしいなと。まさに水を得た魚。やっぱデカはこーでねーと、という絵姿を体現しておりました。

それに加えて、警部役にモーガン・フリーマンっすよ。観た後だから言えますが、この警部役は、オチまで含めて、彼以外考えられないっすねえ。

ストーリーについては、デニス・レヘインのシリーズ物の探偵小説『愛しき者はすべて去りゆく』を元にしており、いかにも小説らしいトリックがあれやこれやと散りばめられてます。謎解き要素については私はなんにも言えませんがね、そこそこ面白いです。それよりも、観客がケイシー・アフレックとともに謎解きをたどっていくことの快感の方が強いといいましょうか、ケイシー・アフレックのキャスティングが絶妙だなあと。弟を起用したのはただの内輪びいきでもなさそうです。

そのほかキャスティング最強だったのは、ラッパーのスレインを麻薬の売人に使ったことです。やられました。完璧な役どころ。お見事でした。