『我々は有吉を訴えるべきかどうか迷っている』を観ました

マッコイ斉藤監督の『我々は有吉を訴えるべきかどうか迷っている』を観ました〜。

本作品は有吉ヒッチハイクのシリーズ3作目。2作目の『我々は有吉を再び訴える』の沖縄ヒッチハイクから、今度は北海道縦断という企画です。シリーズを通して「有吉=ヒッチハイク」を貫いているかと思いきや、今回の主題はヒッチハイクそのものにはなく、「ヒッチハイクを撮影する企画」そのものにありました。立待岬から宗谷岬までヒッチハイクするという企画で始まりますが、いきなりスタートの函館から一発目で、ゴールの宗谷岬まで行くという車を捕まえてしまい、最初の15分くらいでゴールしてしまいます。「ヒッチハイクを撮影する企画」がこれでは成立しない、ではその後どうするか、が主題の出発点となっております。演者の有吉弘行と演出のマッコイ斉藤の間で揉めます。

ここまでは、こう来たか〜、と正直に感心しました。ヒッチハイクの目的は旅そのものにあり、ヒッチハイク企画は旅の過程を撮ることで成立するんですが、本作は旅そのものがほとんどカットされている斬新な魅せるイントロです。『WILD HOGS』で感じたんですが、大したことのないロードムービーにおける旅そのものの無用な感じをうまく言い当てているような気がします。ロードムービーSUCKS!、というのもひとつの立派な態度の表明ですからね。もっともそこには言及せずに、例えば『宇宙人ポール』のようにきちんと旅を撮るのが暗黙の了解というものなんでしょうけれども。

本来だったら、この有吉がゴールしてから始まる物語に期待を寄せるべきなんでしょうけれども、デンジャラス安田さんが登場してからはとことんゲスを極めてまして、まったくしょーもないグダグダな展開、しかし結果的にはこういう方向もアリかな、と最後には思ってしまいます。ゴールしてからの物語はあるのか、それともないのか、と問われたら、ないという場合もある、という答えがこの作品です。

これを面白いか面白くないか、という評価のふるいにかけるのはあまり意味がないことかと思います。ただ、こんな変なDVDを世に送り出せる人は世界でもそんなに多くはないということははっきりと分かります。

マッコイ斉藤さんは本腰を入れてフィクション映画を撮るべきだと私は考えております。ただのニヤニヤ笑いをこらえた有吉との揉めるやりとりも、実際に字幕として読んでみると、なかなかこんな台本は書けないというセリフの応酬になってます。恐らくは有吉弘行のワードのセンスがすごいという点が大きいのでしょう。マッコイ斉藤の撮る和製ジャド・アパトー的映画があればなーと思うんだけどなー。