『ミスティック・リバー』を観ました

クリント・イーストウッド監督の『ミスティック・リバー』を観ました〜。

ミスティック・リバー 特別版 〈2枚組〉 [DVD]
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クリント作品は、ただストーリーに身を委ねるだけでいいから快適ですね。重かったり苦かったりということの方が多いのがツライところですが、それが映画というもの。数少ないオーセンティックな映画を撮るクリント組については、ただ賞賛するのみです。だもんで、必然的にクリント作品の感想を言うとしたら、ストーリーについてどーのこーのという解釈が中心になってしまうんです。

この作品は、どうしてこんなんなっちゃうんだろうという悲劇で、スッキリ爽やかな映画ではなくて、胸の痛む映画です。トラウマある人にとってはまともに観てられない映画かも分かりません。

ボストンの狭いコミュニティが舞台です。頭の出来のいいヤツは、とっととこういうコミュニティを出て、州警察に入って刑事やったりしてるんですが、居残ってる連中はなかなかの不遇っぷりで、刑務所を入ったり出たりしているワルがいたり口の悪い親がいたりするっていう、治安がよいとは言えないコミュニティです。これって、そこそこの都会の小学や中学の同窓会に行ったら、少なからず体験するようなノリですよね。

オトナになってもワルやってるような連中とは、社会人になると付き合いが絶たれるものですが、地元の住民であり、さらに幼馴染みであったりしたなら、腐れ縁はそこに住む限り、多分生涯続くんでしょう。地元の繋がりは大事だとは一般的に言われますが、中にはとっとと出ていきたいって感じて、それでも出ていけないから仕方なく住んでる人も大勢いるわけです。地元の人同士で仲良くできるならいいんですが、もし地元が憎しみや怨みで溢れていたら、暴力の連鎖は次の世代にも引き継がれて、止まらなくなってしまうこともあります。それが内戦にまでなっている例は世界の至るところにあります。それは極端な例だとしても、結婚して子供作って家庭を持っているオトナでも、幼馴染みなどの地元の人間関係に問題を抱えているという話は結構ありそうです。

この映画は、とても面白い構図が提示されます。刑事、被害者、容疑者の3人が幼馴染みなんです。それぞれに生きてきた歴史はあるオトナなんですが、冒頭で描かれるある事件が、この3人に深い爪痕を残していた…っつー話、なのかな、多分。基本的には謎解き映画なので、何も知らずに見たほうがお得なのでこれ以上は自粛します。といっても2003年の超有名映画なんでネタバレもクソもないんですけど…まあ一応のマナーとしてね。

役者の話をしましょうか。ショーン・ペンは悪くておっかないです。地元の大将ってのは、やっぱりこのくらいおっかなくないとねえ。ティム・ロビンスも老けてておっかないです。謎解き要素がある映画なのに、刑事コンビのケヴィン・ベーコンローレンス・フィッシュバーンがズバズバと活躍しないところが実に面白いです。ああでもないこうでもないと続く捜査活動にダラダラ付き合わされる観客の快感といったらこの上ないですね。それから、マーシャ・ゲイ・ハーデンの嘘のつけなさぶりがホントに上手! 男女共にベテラン俳優が揃ってるんで味は濃いし、低所得者層のコミュニティの雰囲気が出てて、そりゃあもう最高でしたわー。

一度、マーシャ・ゲイ・ハーデンパトリシア・クラークソンを並べて、アメリカ的なお母さん像というのを分析したら楽しいだろうなって思います。とても対照的な二人なので、鮮やかな対比ができるんじゃないかなーと。

あと、オチ…の後のシーンを付け加えたことで、普通のああよかったね面白かったよ、という感想で終わらせてないところが、この映画いいなって思いました。普通の事件モノの映画だったら、解決してスッキリとなるはずなんですが、いろいろと解釈できる余地を残しています。それもクリント映画ならではっていう。

なんかもう、コーエン兄弟とかクリント組とかの映画って、私程度の人間はすぐに手のひらに乗せられてしまうっていう感じですねえ。笑っちゃいます、我ながら。