『大和三山の古代』を読みました

上野誠さんの『大和三山の古代』を読みました〜。

大和三山の古代 (講談社現代新書)
上野 誠
講談社
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最初は全然興味なかったんですけどね、読み終えて超面白いと思ってしまいました。実際これ読むまで、「大和三山」すら知らなかったんですから。香具山・畝傍山耳成山のことです。ああよかったよかった。

万葉集古事記の頃の皆さんがどんな方々だったのか想像もつかなかったんですが、例えば三山鎮護の思想は大陸からの神仙思想を剽窃したっていうのはいかにも日本っぽい感じがします。第一、テトリスの凸のピースが合う場所がいくつかあるように、京を中心にして三方に山があるって場所は、日本にいくらでもあるような気がするんですよね〜。で、多分藤原宮を定めた人たちってのは今でいうところの御用学者だと思うんですが、漢籍などの知識で優っていれば、もうなんでも通ったんじゃなかろうか、とかなんとか想像しました。

それから三山それぞれの性別を読み解こうとする歴史学者の様々な解釈、これも楽しめました。桃太郎の物語を知らない人が、も〜もたろさんももたろさんの歌から物語を類推するのが難しいがごとく、詠まれた歌から性別を嗅ぎ当てるのはなんとも難しいのだという喩え話が分かりやすい。男か女かと言われても、結構どの山もなんの変哲もない小山ですからねえ。八郎潟が男で田沢湖が女っていうように地形から類推できるもんでもなさそうです。ただ、当時の語り部たちが、男でも女でもどちらでも意味が取れるように仕掛けたって可能性はないんだろうか、なーんて考えました。

んで時代が下れば、香具山が世界の中心になるだろなってのも納得できる話です。暦を片手に香具山から季節を感じたことを想像するのは楽しいですが、やってたのはどのみち貴族でしょうねえ。百姓だったらもうちょっと経験則から香具山を見てたんじゃないかなあと思うんですけどね。古事記ってのは編者がいたから、百姓サイドから出る歌は結構北朝鮮っぽくなってて、大和マンセーと言ってるだけっていう気もしないでもないです。

という感じで、あっちゃこっちゃにいろんな想像をかき立てられる本でした。いい新書でした。