「友川カズキ 花々の過失」について何かを語ろうか

「友川カズキ 花々の過失」を観ました〜。

しかしまあこういう大人っぽい映画をよくも観たものです。我ながらびっくり。

それにしても映像の力というものを改めて認めざるを得ません。ずいぶんあっけない映画だなと思ったら普通に1時間46分もあったし、ストーリーもなくインタビューのテーマも焦点が特にしぼられておらず、それでも嫌悪感なく飽きずに観ることができたのは、やっぱり映像、そして音なんだろうなと。監督のヴィンセント・ムーンは、PVを多く作ってた作家さんなんですねえ。ちょっとこれからも観てみたいもんです。

そしてさすがにPV映像の第一線だけに、歌っているシーンでは本当に迫力のあるセグメントがありました。あの1分程度のセグメントはやばかった。ああいうことが目の前に起こるから、音楽ってのはすごいんですよぉおお的なw。

もともと友川かずきさんについては、東北弁のフォークシンガーという程度の認識でした。それは映画を観た後でも変わらず、「ああやっぱり東北の、しかも秋田出身のおっさんだなあ」という感慨が余計に強くなりました。でそういう生半可な知識があると、例えば日本の監督が作ったりしたなら、東北の寒い風景なんかを織り込んだりして「わだばなんちゃら〜!」とか訛りを入れて、地縁に囚われた歌と人生、みたいなテーマになってくるんでしょうけど、それは罠なんです。その罠を看破したのかそれともわざと気がつかないフリをしたのか、ヴィンセント・ムーンは東北の地域性についてはあんまり踏み込まない。そのことが逆に、「友川のおっさんは東北人」という事実を引き立たせたんじゃないかな〜とか思っています。

心地よい印象は最後に残るんだけれども、それがなんなのかはちょっと言葉で説明するまでもないことっていうか、言葉で表すと「で結局だからなんなんだよ友川っておっさんはよお」ってことになりかねない。まあ結局なんでもないのかもしれないし。そういうもんですよねっていう感じで、フランス出身の天才がふわーっと日本に来てチャッチャと撮影して編集した作品っていう、そんな気もしてきます。この映画の出来よりも、競輪の勝ち負けの方が人生にとって大事なのは明らかです。ただそういう意味も含めて、アートのなんたるかを知ってる人が、知ってる人を撮ったんだなっていう気がしてきます。観ておくべき映画だと思います。

犬/秋田コンサートライブ
友川かずき
キングレコード (2000-07-26)
売り上げランキング: 20937