『ノトーリアス・B.I.G.』を観ました

ジョージ・ティルマン・Jr.監督の『ノトーリアス・B.I.G.』を観ました〜。

実在したラッパー、ノトーリアス・B.I.G.(以下ビギー)の伝記映画で2009年公開。おお、こんなに最近の映画を借りて観るのは久しぶりっす〜!(笑)監督のジョージ・ティルマン・Jr.は、なんとなんと、『ソウル・フード』も監督してらしゃったとは。


ビギーは1972年生まれ、んで私は1970年生まれ。40歳にして生まれて初めて、ジジイみたいに「長生きもしてみるもんだ」と思えた映画です。あの頃、自分がリアルタイムで東だ西だと当時騒いでいたっけな〜というお話が、まさかまさか、こんなしっかりした映画になるなんて。言うなれば硫黄島の生き残りが『父親たちの星条旗』を観るようなもんです。いや、それとは全然違いますねスイマセン。

キャスティングが実にいい仕事してますよねー。特にビギーとリル・キム。「似てる!」ってのを軽く超えてもう本人憑依レベルです。2パックもよく似せてるなあと感心しました。その他フェイス・エヴァンス、パフ・ダディはイマイチでしたけど、それでもビギーやバッドボーイの時代に思い入れのあるヒップホップファンが観ても全然大丈夫なレベルだと思います。

子供時代はこんなにいいコだったなんてねえ。ジャマイカ移民の母親との母子家庭でいいコに育てるっていうのは、母親がずいぶん気にかけたんでしょうね。息子役はビギーとフェイス・エヴァンスのほんとの息子らしいです。母親役のアンジェラ・バセット、さすがにお上手。

リアルさというよりも、そこかしこに出てくるいかにも映画っぽい作りの方が楽しめました。パフィがMtumeの"Juicy Fruit"をビギーに聞かせて座が一度しらけるシーン、ビギーとフェイス・エヴァンスがいちゃつくのを目の前にしたリル・キムの罵倒ラップシーン、てんぱった2パックが車で乗り付けてわめくシーン。2パックを演じたアンソニー・マッキーは『ミリオン・ダラー・ベイビー』でもボクシングジムでわめいて強がるヘタレキャラを演ってましたが、なんというかもう、この映画での2パックの扱いもひどいもんですな(もっとひどいのはデス・ロウのシュグ・ナイトの立場ですけどw)。まあこれが映画っていうことですよね。真実とは言いがたい。

全体としては、あの頃の「東西抗争」がいかに不毛だったかを描こうとしたんでしょう。真実ではないんですが、マスコミや聴衆がほとんど自動的に煽っていく様子が十分伝わりました。ああくだらない。こんなくだらないことでビギーは24歳で死んでしまったんだな、人生とはなんちゅうことや、と改めて思いました。空しいですねえ。しかし1990年代の西海岸の荒れっぷりでは、抗争が収束したにせよ、誰も止められなかったのかもしれませんなあ。

あとまた重箱の隅の話ですが、ビギーが捕まったときの刑事役はよかったです。どイタリア人な風貌とキャラを売りにしているジョン ・ ヴェンティミリアという役者なんですが、この人は一度飲酒運転とコカイン所持で逮捕されているんですねー。そんな方が、「銃の不法所持でどっちかぶちこんでやる」と取調室で息ましてたわけですね。面白いです。